インタビューココだけ | ガールズ&パンツァー 最終章

大洗町とガルパンのコラボレーションを生み出すフロントランナー! 大里 明[大洗町回覧板 こちらガルパン出張所]

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『ガールズ&パンツァー』の舞台・大洗で、より作品を身近に感じている方々に、作品と出会ったきっかけやエピソード、作品への思いなどを聞いていく『大洗町めぐり~大洗の今、そしてこれから~』。第3回は大洗観光協会会長/割烹旅館 肴屋本店 代表 大里 明さんにお話を伺いました。

「『ガルパン』ファンの方が書かれた飲食店レポートを参考にさせてもらっています」

──まずは『ガールズ&パンツァー』に関わられた経緯からお聞かせください。

東日本大震災後の2011年12月、僕は商店街、常盤良彦さんはOCM(大洗クリエイティブマネジメント)として復興の取り組みをしていました。そんなある日、大洗町商工会の田山東湖会長に呼ばれて「君ら若手で町が賑わうような取り組みをしなさい」と言われたのが最初です。偶然にもその時アニメの企画が常盤さんのところへ来ていて「今、こういう企画が来ているので手伝ってほしい」と頼まれたんですよ。それがきっかけですね。

──具体的にはどのようなお手伝いをされたのでしょう?

最初は常盤さんが一人で動かれていました。僕はオーアライダーというご当地プロレスなどの企画を常盤さんと一緒に進めていました。そして2012年の夏前に商工会青年部で「幸せの黄色い自転車計画」という企画が出て、その時に常盤さんからの提案で自転車のホイールに『ガルパン』の絵を入れることになったんです。それが私自身が最初に関わった仕事ですね。そのレンタル自転車は現在も稼働しています。

──そして第4話の聖グロリアーナ戦で肴屋本店さんにマチルダIIが突っ込むわけですが、過去に車に突っ込まれたことが本当にあったそうですね。

そうなんですよ(笑)。ウチはご覧の通りクランクの曲がり角にあるので、曲がりきれなかった車に突っ込まれたことがあります。アニメでマチルダが突っ込んだ位置と同じです(笑)。あのシーンは事前に「戦車で店を壊しても良いですか?」と連絡をいただき、「アニメで描かれるだけなので良いかな」と軽いノリで承知しました。ただ最初は引っかかった砲身が外壁を壊す程度だと思っていたんですよ。まさか、あのように軒下にダイレクトインするとは思ってませんでした(笑)。最初は戦車の知識もなくサイズも分からなかったので。

──店主の顔は大里さんとまったく違いましたが、どなたかモデルになった方が別にいたのでしょうか?

特にモデルがいたわけではなく、アニメーターさんがイメージした「旅館のおやじ」として描かれたのだと思います。実はオンエアの後でスタッフの方々がウチのお食事会に来られて、その時にあのシーンを描いたアニメーターさんとお会いしたんですよ。「もっと若く描けば良かったですね」という話をされていました(笑)。

──『ガールズ&パンツァー』という作品から受けた印象をお聞かせください。

非常に面白い作品だと思います。一番面白かったのは第4話の市街戦で、ウチが壊された後、若見屋交差点でⅣ号戦車がマチルダを連続で撃破してゆく描写がすごい好きなんですよ。「こんな戦術の立て方があるのか!」と感心しました。あと第4話以降のスピーディーな展開も好きです。

──大里さんが原体験でご覧になっていたアニメ作品は何ですか?

今41才ですが、小さい頃に観ていたのは『機動戦士ガンダム』と『ドラゴンボール』です。大人になってからはジブリ作品と『新世紀エヴァンゲリオン』くらいですね。ただ、そんなにハマって観るほどではないです。

──『ガルパン』に関わられたことで戦車への印象が変わったのではありませんか?

戦車や軍事用語に詳しくなりましたね。あと自衛隊の武器学校のイベントにもプライベートで行くようになりました。『ガルパン』と出会わなければそういうものに興味を持たなかったと思います。

──肴屋本店さんの公式サイトを拝見すると予約が2か月先まで埋まっていますが、これは『ガルパン』効果の影響もあるのでしょうか?

もちろんそうです。前に「ガルパン応援プラン」というあんこう鍋のお一人様コースを発表したら、サーバーがダウンして「肴屋のホームページが見れない!」と苦情をいただくこともありました(笑)。それ以降は多くのお客様が訪れるようになり、特にあんこう鍋シーズンの11月から3月はご予約でほぼ満室になる状況が続いています。『劇場版』公開後の1年間は大洗に人が溢れてすごく忙しくて、その後は次第に落ち着くと思っていたんですよ。ところが昨年12月から今年1月のご予約数が前年よりも多かったし、先日の「海楽フェスタ」の時は新規の方も多くいらっしゃいました。

──宿泊されるファンの印象はいかがですか?

総じてマナーの良い方ばかりです。ウチは9部屋しかない小さな旅館ですが、全国各地からお客様が来てくださいます。週に1組は海外の方もいらっしゃるんですよ。一番の多いのは台湾で、その次は香港。最近は韓国の方も訪れるようになりました。海外の方はコミケに合わせて宿泊される方が多いです。印象的だったのは台湾から5人の若い人達が5泊も滞在されたことです。大洗に5泊も滞在して何するんだろうって(笑)。それが昨年の2月頃で、全員でココスに食事に行ってクリアファイルをもらっていました(笑)。

──『ガルパン』ファンの宿泊客が増えることで、以前からの常連客が利用し難くなってはいませんか?

『ガルパン』以前から常連だった方も早めにご予約をいただいているので大丈夫です。「まだ続いてるんだ。凄いねぇ」という感じで特に迷惑がっている様子でもなかったですね。つい先日も久しぶりに来てくださったお客様が「ここも予約が取りづらくなっちゃったからなぁ」とぼやかれながらもご利用いただけたので。逆に今回のブームをきっかけに、昔うちに来ていた常連さんから再度連絡をいただいたこともありました。「小さい頃にお世話になった肴屋さんとこんな形で再会するとは思いませんでした。実は息子が『ガルパン』にはまったんですよ」と言われました(笑)。

──大洗を訪れるファンの印象をお聞かせください。

テレビ放送時は40代を中心とした世代が多かったですが、『劇場版』公開後は20代、30代がグッと増えましたね。あと女性のお客さんが増えたんですよ。カップルだけでなく女性同士とか、中には女性一人でいらっしゃる方もいました。もちろん圧倒的に男性が多いですけれど。そして『最終章』からはさらに新規のお客さんが訪れるようになりました。先週も『ガルパン』は知っているけど「海楽フェスタ」は知らないというお客さんがいらっしゃいました。

──『ガルパン』関連のイベントで感じたことはありますか?

誕生会などの小規模なイベントもやらせていただいていますが、毎回、申し訳ないほど少ない労力でやりくりしているんですよ。でも終わった後は皆さん「楽しかった」と声をかけてくださって、その言葉が我々の励みとなっています。それとアニメに合わせて新キャラクターのパネルを増やすと、今まで知らなかった町の人と関わるようになるじゃないですか。それによって「あ、この店ってこんなノリだったんだ」という新発見があるのが楽しいですね。今回も新しくパネルを設置したお店があるので様子を見に行ったんですよ。そうしたら「海楽フェスタ」で大勢のファンがいらしたようで、店主の方がニコニコしながら「良いパネルをよこしてくれてありがとう」と言われました。そういうのは嬉しいですね(笑)。

──まだ全部のお店にパネルは行き渡ってないのですね。

キャラクターの数に限りがあるので、希望するすべてのお店に設置できるわけではありません。ただ以前と比べると落ち着きましたね。今回のパネルは18体追加で応募者が20数件だったので、あと少しで行き渡ると思います。『最終章』はあと5本続きますから、今後どんなキャラが出てくるのかみんな楽しみにしています。あと大洗を訪れるファンからは「モブキャラもパネル化してほしい」という声も挙がっているんですよ。一方、最初はパネルのキャラクターに客足が左右されると思っていた店主もいましたが、「パネルは入口で、お客さんはお店の人のキャラクターに惹かれて寄ってくるんだよ」という話をしました。吉田屋さんの「ume cafe WAON」さんのようにパネルがなくても店主のキャラクターに惹かれてお客さんを集めている店もありますからね。

──パネルの割り振りはどなたが決められているのでしょう?

基本的に僕が任されています。最初の53体のパネルを置く時から一任されて、僕の割り振り案を常盤さんに確認してもらっています。それぞれ、ある程度のストーリー性は考えています。たとえば大学選抜チームのパネルって飯田屋水産のおケイさんを中心にトライアングル状に配置していたんですよ。でもメグミを設置していた居酒屋七輪さんが閉店することになり、トライアングルを保つため近くにある民宿の足袋豊さんにパネルを引き取ってもらったんです。ちょうど足袋豊さんがパネル抽選に当たったので。またプラウダ高校のメンバーは出来るだけ固めたりとか、もちろんお店の雰囲気に合わせたキャラクターを選ぶこともあります。今回はドルフィンさんのパネルをフリントにするかカトラスにするかで悩みましたが、やはりカウンターの中にカトラスがいるべきかと思い、カトラスに決めました。

──パネルはどのように作られているのでしょうか。

印刷は業者さんや常盤さんにやってもらって、それを貼ってカットするのは商工会青年部が担当しています。最初はアニメの設定画を拡大していたので絵が荒かったのですが、後に等身大に耐えられるデータをいただいてリニューアルしました。またパネル自体も最初は陽の光で退色しやすかったのですが、最近は耐光性で汚れても拭けるものになっています。

──パネルも進化しているんですね。

パネルをカットする青年部のスキルも上がっています。先日の追加作業では15体を1時間ちょっとで作り終えたんですよ。パネルのカットって曲線が多いから難しく、板に厚みがあるので力も使うんですよ。でも、みんな手慣れた上に人数も増えたので、各自が得意分野を役割分担することでスムーズに終わらせました。全員が『ガルパン』に愛着を持っているので作業中は楽しそうでしたね(笑)。

──そう言えば新しく雇った従業員さんが『ガルパン』ファンだそうですね。

3月の半ばから働いている二名のスタッフがそうです。二人とも『ガルパン』が好きで大洗に移住してきたんですよ。彼らには「この仕事は土日がメインだからイベントには行けないよ」と忠告したら、「イベントはもう十分楽しみました」と言われました(笑)。ただ一人は先日の「シネマティックコンサート」のために休暇をあげたんですよ。ウチが雇う前にチケットを買っていたそうなので。もう一人は普通に出勤していたのですが、食事なしのお客さんばかりで手が空いたんですよ。そこで「シネマティックコンサート」の手伝いに行ってもらいました。雇ってから2日目で早くも『ガルパン』仕事を手伝わせてしまいました(笑)。その子、やたらとテキパキ動くので驚いたんですよ。昔、フジロックフェスティバルで大道具をやっていたそうです。なるほど現場慣れしているわけだと感心しました。

──『ガルパン』きっかけで大洗に移住した方もいらっしゃるんですね。

100名近くいて、その多くは大洗で働いていると聞いています。旅館や飲食関係でも、ウチやシーサイドホテルさん、里海邸さん、そして潮騒の湯さんなど町内各所で、あと水戸に務めている人もいるそうです。このように『ガルパン』には人手不足の面でも助けられています。「ハローワークより大洗駅に募集広告を貼った方が人が集まる」なんて言われるくらいです(笑)。

──大洗でも人手不足という問題があるのですね。

独身の僕が言うのも何ですが、民宿さんなどで一番問題なのが後継者不足です。『ガルパン』で注目された大洗ですが、残念なことに何件かのお宿が閉まりました。それは経営的な問題ではなく後継者がいなかったからなんですよ。宿泊業界のサービスは「一泊二食つき」が基本ですが、店主の高齢化や人員不足で飲食の提供が難しいお宿さんが増えているんですよ。その場合お宿さんは宿泊のサービスだけを提供し、食事に関しては近隣の飲食店さんを紹介するようにしています。これを「宿食分離」と言うのですが、その時に出来るだけ多くのお店が紹介できた方が良いじゃないですか。その候補を考える際にファンの方が書かれた飲食店レポートが非常に役に立っています。これも「ガルパン」効果の一つと言えると思います。地元の僕も知らなかったお店までありましたから(笑)。

──なるほど。そのように大洗を訪れるファンが絶えないのはなぜだと思いますか?

大洗は穏やかな気候の静かな町です。人を集めるような観光資源があったわけではなく、画家が静養に来るような保養地として歴史を重ねてきました。そして今、忙しい現代社会の中で『ガルパン』ファンの方が足繁く通ってくださるのは、この大洗が首都圏からそれほど遠くない距離にあるからだと思っています。日帰りもできるし、ゆっくりしようと思えば宿泊施設や飲食店も揃っている。そのように気軽に息抜きできる場所であることを僕らは上手くアピールしていこうと思っています。

──観光協会として今後の町作りをどのようにお考えですか?

これまで大洗は『ガルパン』ファンがいつ来ても楽しんでいただけるように町をカスタマイズしてきました。具体的に言いますと、先ほどお話ししたキャラクターパネルの設置や、毎週のように何かしらのイベントを開くことです。このような取り組みは『ガルパン』以外の観光客にも適用できる筈なので、大洗の新しいターゲットになるのは何かを協会内で話し合っています。今までは色々な客層を広く浅く求めていましたが、今後はそうもいかないと思うんですよ。たとえば同じ大洗でも町内は広く、この商店街、磯前神社下、サンビーチ、シーサイドステーションではカラーが違うんですよ。そのエリアに応じたカスタマイズをすれば他の層にも響くような面白い町になると考えています。その企画を各方面の方からアドバイスをいただき取り組もうと思っています。

──ファンに向けてメッセージをお願いします。

大洗の魅力は地元のおじちゃん、おばちゃんとのコミュニケーションだと思います。初めて来る一見さんだからと言って邪険にすることはないので、どのお店に行っても気軽に声をかけてコミュニケーションをとってほしいです。店の人達もファンの皆さんとのコミュニケーションを楽しみにしていますし、商店街には美味しい物もいっぱい揃ってますので。

──最後に次のインタビュー相手を指名していただけませんか。

大洗町商工会の坂本博事務局長をご紹介します。僕と常盤さんがよく「『ガルパン』の功労者」なんて言われていますが、僕らは一番の功労者と呼べるのは坂本さんだと思っています。『ガルパン』と大洗の関係がここまで広がったのは坂本さんがいたからこそです。缶バッジ製作などで我々の活動資金を捻出してくださったり、色々な面でフォローしてくれる縁の下の力持ちなんですよ。坂本さんには「これからも無茶ぶりをしていきますので、今後も僕らのサポートをよろしくお願いします」とお伝えください(笑)。

PROFILE

大里 明(おおさとあきら)
1977年1月24日生まれ、大洗出身。明治20年から続く老舗旅館「割烹旅館 肴屋本店」の七代目代表。先代の逝去により31歳で跡継ぎとなり、多忙な時期に東日本大震災に遭い、やがて『ガールズ&パンツァー』に関わるという激動の10年を過ごす。2017年9月に大洗観光協会会長に就任。協会を「町の下請け」ではなく町を引っ張れる存在にするため尽力している。

<上映情報>

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