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映画『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』出渕裕総監督インタビュー

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苦難の航海を経て、イスカンダルで〈コスモリバースシステム〉を受領し、地球へ帰還しようとしていたヤマトの前に新たな敵ガトランティスが立ち塞がる! 手に汗握る大迫力の艦隊戦が描かれ、多くのファンを魅了した『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』のキャラクター・メカニック・アクションなどについて出渕裕総監督を直撃! ここでしか読めない出渕裕総監督の“本音”を見逃すな!

ナスカ級は昔から好きな艦でしたけど、より一層好きになりました!

――本作『星巡る方舟』の企画はいつ頃から動き出していたのですか?

第五章の作業が終わってから話を頂いたので、第六章を制作していた頃です。ただ、本編(全七章)の作業が終わってからでないと構成を始められませんし、その年の暮れから脚本に入れたとして実質期間は1年。時間はそれほどありませんでした。その限られた時間の中で、オリジナルを作ろうと考えた時に、イスカンダルから地球へ帰還するまでに起きたエピソードならば可能なのかなと考えました。その理由の一つとして、現状の設定をある程度そのまま使えるということがありました。もちろん、新規で起こさなければならないものもありますが、今ある設定を7、8割は活用できるからです。そう考えると、本編の中に収まる形の物語ならば、劇場クラスに膨らませることはできるのかなと。それでも時間的には相当厳しかったですね(笑)。

――新たな敵としてガトランティスが登場しましたが、まさに戦闘民族といった感じのビジュアルでした。登場人物のデザインを進める際、結城さん(キャラクターデザイン・結城信輝)にオーダーしたことは何かありますか?

僕からのオーダーとしては、昔の『宇宙戦艦ヤマト2』や『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に出てきた白色彗星帝国とは切り口が違いますということ。大帝のズォーダーについては片鱗を見せるというか、バックボーンに少しだけ触れるというくらいで、そのパイプ役としてサーベラーを使い、あとは新規に起こしてもらっています。あとはオリジナルデザインにある意匠を、上手く蛮族らしい落としどころを一緒に見つけましょう、というくらいでしょうか。

――ガトランティスの戦艦デザインにはかなりのインパクトがありました。デザインで苦労した戦艦や、お気に入りの戦艦があれば教えてください。

デザインで苦労したのはメガルーダですね。担当してくれた石津君(メカニックデザイン・石津泰志)も大変だったと思います。ガミラス艦と比べて、ガトランティスの艦は構造が塊ではなく多層になっていて複雑なんです。“ここって、一体どうなってるんだろう?”っていう部分が非常に多くて、そういう多層構造のメガルーダやナスカは苦労しましたね。苦労したって意味でも、個人的にはナスカ級が好きです。昔から好きな艦でしたけど、今回のデザインを経て、より一層好きになりましたね。

ヤマトを交えた本来の「艦隊戦」を『星巡る方舟』でやっとできた!

――出渕総監督は様々な作品でメカニックデザインをされていますが、そういった意味で、本作では総監督の立場ではありますが、メカデザイナーの視点から作品を考えることもあるのですか?

それは当然あります。本編には登場しませんでしたけど、今回の劇場版には登場させたいと考えていたものはあります。それが実はコウノトリ(キ8型試作宙艇)なんです。あの機体と似た役割を持ったコスモシーガルがヤマトには積まれていましたが、本編で二機とも潰してしまいました。そこで、他に惑星探査ができるものとして、オリジナル1作目に出てきた探索艇を復活登場させようと考えました。でも、何故『2199』本編では今まで登場しなかったの?という疑問が観る側から出てきますよね。そこで〈イズモ計画〉という反乱話と繋げようと。その計画にある移住可能な惑星を探査するために実は積んでいたということであれば辻褄は合うなと考えました。その話から新見の立ち位置にも触れることができる。そういうプロップを使って上手く構成できると思ったし、そういう風にしていきたいという想いがあるんです。単に新型が登場しましたというよりは、プロップに密接にリンクしている形にできるのが一番だと思っています。それは多分、デザインした人にとってもそうだと思っていて、なぜなら僕自身がそうでしたから(笑)。単にデザインを提供しているだけでなく、作品の世界観やドラマの部分にも貢献できるというか、やはりデザインってそういう風に使われてこそだと思うんですよ。それに、デザインする人もその方がやりがいがあるじゃないですか。

――ヤマトと波動砲は密接な関係にあると思いますが、本作では波動砲が封印されています。そういった意味で、波動砲を使用しない戦闘の見せ方という点で拘った点などがあれば教えてください。

戦艦同士のドッグファイトをやりましょうと、構想の段階から西井さん(チーフメカニカルディレクター・西井正典)とは話していました。相手のガトランティスは野蛮な戦闘民族として描いていますので、最後は殴り合いというか、ヤマトとメガルーダの図式は、殴り合いを経て最後はどっちが先に抜いて撃つか?という西部劇の決闘に近いイメージで描きました。実は『ヤマト』シリーズでは一対一の戦闘って意外と少ないんですよ。いつもヤマト対多数なので。その戦力差を解消するために『2199』では、波動防壁という設定を作ってヤマトが打たれ強い面を自然に見せようとしたのですが、それでもヤマト単艦では苦しい描写もありました。でも、今回は映画のテーマにもなっていた“相互理解”や“共闘”に至るというところを含めて、ヤマト一艦だけでなく、ガミラスのバーガー艦隊がいて、彼らと協力してガトランティスのダガーム艦隊と激突する。艦隊対艦隊という意味で言えば、ヤマトを交えた本来の「艦隊戦」をここにきてやっとやれたのかな、と思っています。ヤマトにとって波動砲は最終手段だと思っています。シリーズではそれを使ってヤマトが危機を切り抜けるシーンがありますが、基本的にヤマトは敵を殲滅することが目的ではなく、進んでいく道を切り拓いていくために波動砲を使っています。一方のガトランティスの火焔直撃砲は、敵を殲滅させるために撃ってくる。逆に言うと、敵が強大でかつ卑怯なものを持っていれば持っているほど、それに知恵と信頼で打ち勝っていくという方向にもっていくことがドラマの見せ方として正しいのではないかと思います。今回も波動砲がなくて大丈夫なのかと言われていたようですけど、そう言う意味でも逆に僕は良かったと思っています。波動砲がないから艦隊戦ができた訳だし、波動砲があれば、どうしても波動砲に頼った見せ方になってしまうと思うんですよね。

思い出に残っているのは、やっぱり劇場で第一章が上映された時!

――長期間に亘って『宇宙戦艦ヤマト2199』に携わってこられた訳ですが、思い出に残っていることは?

色々ありますけど、やっぱり劇場で第一章が上映された時でしょうか。ようやくここまで辿り着けたんだって。みんなで最後まで諦めずに進んでこれたから、今があると思うんです。劇中で古代がいう沖田艦長の台詞で“諦めるな!”っていうのがありますが、まさにその通りだと思いました。ですから、それが形になって上映された時が、俗っぽい言い方ですけど、“感無量”でした。

――いよいよ『星巡る方舟』のBlu-ray&DVDが発売されます。音声特典のオーディオコメンタリーには出渕総監督も出演されていますが、収録の方はいかがでしたか?

色々な話ができて、とても面白かったです。収録も大人数でしたし(オーディオコメンタリーには古代進役の小野大輔さん、フォムト・バーガー役の諏訪部順一さん、桐生美影役の中村繪里子さん、チーフディレクターの別所誠人さんに加え、総監督の出渕裕さんが参加)。別所君はウィットに富んでいる人で、僕と二人で漫才みたいなこともできるし、キャストの皆さんも『ヤマト』が好きな人ばかりだったので楽しかったです。ただ、諏訪部さんには“出る出る詐欺”って言われましたけど…(笑)。どういうことか簡単に説明すると、劇場版を制作することが既に決まっていて、七色星団の戦いの時にバーガーを明確に戦死させるという描写は避けたんですよ、その時からバーガーは劇場版で使えると思っていたので。なので、諏訪部さんにはアフレコが終わった時に「バーガーは生きてますから」と言ったんです。諏訪部さん的には最終話近くでまた登場すると思っていたらしく、最終話を迎えても登場しないので“出る出る詐欺”だって(笑)。とても楽しい収録でしたし、聴く方も楽しんでいただけるオーディオコメンタリーになっていると思います。

――初代テレビシリーズの放送から約40年が経過し、今なお多くの人々を魅了し続ける『宇宙戦艦ヤマト』シリーズの魅力は、どの辺にあると思いますか?

ある意味『宇宙戦艦ヤマト』はロードムービーで、旅する先々で様々なことが起こる。そういう宇宙を旅するロマンみたいなものがあると思うんです。当時はそれがファンに支持されたのかなって思いますし、それがやはり普遍的な魅力になっているんじゃないかな。ビジュアル的にも素晴らしかったですし、船が宇宙を行くというファンタジー的な部分もあるんですけど、それをロジックでSF的に“らしく”見せることもできる。それが『宇宙戦艦ヤマト』の他の作品にはない強みなのではないかと個人的には思っています。

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