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村田和也×ボンズが贈るオリジナルバイオSFアクション!『A.I.C.O. Incarnation』村田和也監督スペシャルインタビュー[前編]全文掲載

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大ヒットを記録した『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』で劇場初監督を務め、『翠星のガルガンティア』では原案・監督として鮮烈なオリジナル作品を世に送り出した村田和也と、『交響詩篇エウレカセブン』などで高い評価を受けるアニメーション制作会社・ボンズがタッグを組んだ話題のオリジナルSFアクションアニメ『A.I.C.O. Incarnation』が、2018年3月9日(金)より好評配信中! そこで今回は、村田和也監督のインタビューを前後編の2回に分けてお届け。作品の根幹となるアイディア、設定やデザインの細部に至るまで、監督のこだわりを感じる本作。『A.I.C.O. Incarnation』に込められた監督の思いとは?

●インタビュー後編はこちら


近年は定額配信サービスが大きく広がってきて、アニメの観られ方は変わってきていますが、
より多くのお客さんに作品が届くようになればいいと思います

──まずは、本作の監督を担当されることになった経緯についてお聞かせください。

村田『翠星のガルガンティア』(以下『ガルガンティア』)のTVシリーズの最終話あたりを作っている時に、ボンズのプロデューサーの天野さんから「バンダイビジュアルさんとオリジナルの企画を進めているので一緒にやりませんか?」と声を掛けて頂きました。その時に伺った作品の方向性は「チームものでアクションもの」というもので、その時点ではTVシリーズの企画の話でした。

──本作はストリーミングサービスのNetflixで独占配信されるアニメ作品です。制作を進めていく上でTVシリーズと違う点はありましたか?

村田TVシリーズを想定して制作を進めていましたが、Netflixの配信に切り替わる時に、こちらの当初の予定通りの尺と話数構成のまま配信したいとご提案頂きまして。なので、ネット配信に変わったからといって何か内容を変更したということはないですね。ただ、TV作品だと不特定多数の視聴者が偶然観る可能性があることから、残酷に見えたりグロテスクに見えたりする部分については表現を抑える必要があるんですが、配信だと積極的に観る意思のある人だけが観ることになりますので、表現上の譲歩はそんなにしなくてもいいのかなとは思いました。それとは別に、仮に最後までTVシリーズとして制作を進めていたのであれば、スケジュールがもっとタイトになっていたはずですので、現場の作業負荷を軽くするために、内容的にどこかを大幅に省略しなければいけなかったに違いないと思います(笑)。

──村田監督ご自身は配信サービスでのアニメの未来についてはどのようにお考えですか?

村田アニメの露出媒体や形態はもっと増えていいと個人的には思っています。最初に東映さんが劇場アニメを、手塚(治虫)さんがTVアニメをスタートさせて、以後その2本柱で続いてきましたが、80年代や90年代あたりから家庭用録画機の普及と共にそれらがビデオパッケージ化され、そこからOVAという形態が生まれました。その後、インターネットとハードディスクレコーダーが普及したことで、作品を観るという行為が我々の生活シーンの中で劇的に変化してきました。さらに、近年は定額配信サービスが大きく広がってきて、アニメの観られ方は変わってきていますので、まだまだこの先どういうメディアが生まれるのか分からないです。アニメーションというコンテンツを人が観るという行為自体はなくならないと思うので、これから先も媒体を変えてどんどん色んなところで観られるようになっていくんじゃないかなという気がしています。媒体の進化はそもそも予測不可能なものだと思っているので、そこに制限をかけるべきだとか、こうあるべきだという考えもないですね。より多くのお客さんに作品が届くようになればいいと思います。

作品の一番の核となる部分に“身体の分離手術”というアイディアを据えました

──本作のアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか?

村田“身体の分離手術”というアイディアはフリーの演出になって初めての仕事だった『プラネテス』(谷口悟朗監督/2003年〜2004年放送)をやっていた頃に思いついたものです。折角フリーになったんだから何かしらオリジナルの企画を持っておこうと思って、自分のやりたいことを色々と考えていました。その時に大きなテーマを二つ思いついて。その一つが巨大船団を生活の基盤にする人々の物語である『ガルガンティア』で、もう一つが、人工生体技術によって一人の少女の身体が二つに分かたれてしまうという今回の『A.I.C.O. Incarnation』(以下『A.I.C.O.』)になる話でした。アイコの企画は色んな人に見せていて、一度、OVAシリーズとして脚本に入る前ぐらいまで進んだことがあったんです。「身体にとある秘密を持った女の子を救うために、組織に追われつつ東京から北海道まで移送する」というロードムービー的な逃避行の物語として。それが現在の『A.I.C.O.』の雛形となっています。ただ、その時は、他の仕事の依頼が入ってしまったので、そこで止まってしまいました。今回の『A.I.C.O.』では「チームものでアクションもの」というお話を頂いて考えをスタートしましたが、進めていくうちに、そのアイコの企画の設定を入れ込めるのではないかと気づいて、作品の一番の核となる部分に“身体の分離手術”というアイディアを据えました。それによってプロデューサーの目標も達成できるとともに、僕自身が以前からやりたかったことも実現が可能となりました。

──近未来設定のSF作品には珍しく、本作の舞台は都市部の東京ではなく地方の富山県です。ダムというアニメではあまり馴染みのない装置も含め、舞台設定はどのように決めていったのでしょうか?

村田最初は「バースト」という人工生命体による災害地域を、東京などの都市部、例えば山手線の内側辺りでやろうかなと考えていました。ただ、それだと被災地域と周辺部を合わせるとあまりにも舞台が広くなりすぎて収集がつかなくなる。都市パニックものになってしまうと、そのパニックにどう対処するかという話の方がウエイトが大きくなって、アイコの秘密にまつわる繊細なドラマや謎解き、個々のキャラクターの身体アクションなどが、薄くなる可能性が高い。また、舞台の仕立てが今までによくある怪獣ものと大差なくなってしまうことも避けたかったので、地域を限定した閉鎖空間の中で物語を進行させた方がいいんじゃないかと考えました。その中で浮かんだのが富山県の黒部峡谷です。僕自身が昔から黒部ダムに関心があって、以前に一度訪れたこともあります。黒部峡谷は平野部から黒部川の源流の山奥まで連なる巨大な谷です。発電用のダムがいくつもあって、黒部ダムは最上流にあるんですが、あまりにも急峻な場所なので、平地部から出ているトロッコ電車は黒部ダムまで達してなくて、途中から徒歩による登山コースになるんですね。まさに秘境です。観光ルートとしてはダム建設時に信州側と立山側から掘られたトンネルで行くんですけど、川を遡って辿り着こうとしたら断崖絶壁の細道を行くしかない。そんな険しい場所だという印象がずっと心に残っていたので、いつかここを使いたいなと思っていました。

人間の細胞とそっくりなものを人工的に生み出せる人工生体という技術が
この作品のSF要素の中で一番大きい嘘です

──日本の地方都市で発生した事故や災害というと、どうしても震災や原発事故を想起しますが、作品を制作する上でそういった部分は意識されましたか?

村田最初の頃は、何かしらの巨大なトラブルを解決するために特殊任務を帯びたチームがその任務を遂行する話、という漠然としたイメージだけが頭の中にあったんですけど、東日本大震災が起こり福島の原発事故が発生した後のことですので、具体的にそのことをテーマにしようという話はしていませんが、(本作を含め)当時企画されていた作品の多くがその影響を受けていましたので、やっぱり皆さんの意識の中にはそのことがあったと思うんですよね。それと個人的には、物理的、化学的、あるいは宇宙からの何か的な方には持って行きたくないなというのがあって、そこで僕の方から提案させて頂いたのがいわゆるバイオハザード、生物災害です。自分の中の先々のテーマ性として生物学的な分野というのは一つ大きなファクターになると考えて興味を持っていたというのもあるんですけど、ダイレクトに福島の事故へ繋げたくないという想いがありました。

──作品の世界観はコンセプトやメカニックなどのデザインを含めてどのように作り上げていったのでしょうか?

村田人間の細胞とそっくりなものを人工的に生み出せる人工生体という技術がこの作品のSF要素の中で一番大きい嘘です。その技術が実現していると仮定した時に、世の中でどのようなことが起こり、どのようになっていくのかという周縁部や細部はリアルに作り上げていきたかったんですよ。もちろんアニメならではの嘘や誇張はいっぱいあるんですけど、現実の延長線上にあるように見えて欲しいなという想いがありました。研究所や病院、バイオ研究を基盤とした研究都市とそれに関与している政府の部門、バーストが起こった時に国が執り行う対策や措置といった細かな部分はリアルに感じてもらえるよう気を払いました。だから、作品内に登場するメカもアニメ的なスタイリッシュさを求めるよりは、決して遠い未来ではなく少し先の技術があれば作ることができそうな見た目というものを意識してデザインしています。例を挙げると、現在普及しつつある二本腕のパワーショベルなどの延長線上としてのメカ、というイメージです。

──キービジュアルを含め、SFのデザインが溢れる世界の中で主人公の二人だけがずっと学制服姿ですが、これに関しては何かこだわりや意図があるのでしょうか?

村田ダイバーたちがエリアの中に入ってマターと戦うというのはものすごく非日常的なことじゃないですか。でも、その現実離れした光景をあくまで現実に起こったこととして受け止めて欲しいという、その一つの象徴としてのアイテムが学生服です。学生服も今は色々なデザインがあって千差万別ですけど、そこにあえて一番オーソドックスな学ランとセーラー服を着た主人公を置くことで、現実の日本で起こった出来事という印象を想起させています。それとミスマッチ感、明らかに場違いな二人ですよね(笑)。あとは、昭和的な少年少女向けSFの空気感が出るといいなという狙いもありました。

の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。

●後編は、3月15日(木)公開! お楽しみに!!

PROFILE

村田和也(むらたかずや)
大阪府出身。アニメーション監督。『交響詩篇エウレカセブン』や『コードギアス 反逆のルルーシュ』などに携わり、2013年にオリジナル企画の『翠星のガルガンティア』でTVアニメ監督デビュー。その他の監督作品に『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』、総監督作品として『正解するカド』などがある。

<配信情報>

2018年3月9日(金)よりNetflixにて全12話好評配信中!(1ヵ月無料体験実施中)

【Netflixについて】
Netflixは、190ヵ国以上で1億1700万人超のメンバーが利用するエンターテインメントに特化した世界最大級のオンラインストリーミングサービスです。アワード受賞作を含むオリジナルコンテンツ、ドキュメンタリー、長編映画など、1日あたり1億4000万時間を超える映画やドラマを配信しています。メンバーはあらゆるインターネット接続デバイスで、好きな時に、好きな場所から、好きなだけエンターテインメントを楽しむことができます。同社サービスには、広告や契約期間の拘束は一切ない上、Netflix独自のレコメンデーション機能が一人ひとりのメンバーの好みに合わせて作品をオススメするため、お気に入りの作品が簡単に見つかります。

Netflix 公式サイト

A.I.C.O. Incarnation 公式サイト

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