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米日英の3大クリエイターがタッグを組んだ話題のオリジナルアニメ!『THE REFLECTION』長濵博史監督×三木眞一郎スペシャル対談全文掲載

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アメコミ界の巨匠、スタン・リー。日本が誇るアニメーション監督、長濵博史。数多くのヒット曲を生み出している音楽プロデューサー、トレヴァー・ホーン。米日英の3大クリエイターがタッグを組んだ本格ヒーローアクションアニメ『THE REFLECTION -ザ・リフレクション-』が、2018年2月23日に特典満載のBlu-ray BOXで発売される! 待望のパッケージ化を記念して、長濵博史監督とエクスオン役を担当している三木眞一郎さんの対談が実現。二人を繋いだのはゲーム内での「スパイダーマン」の演技。そこから始まった二人の仕事に対する熱き想いや、彼らにしか共有することができないエクスオンの謎に迫る!

三木さんは自分の中でスパイダーマンの人なんです

──三木さんがエクスオン役に選ばれた経緯を教えてください。

長濵アニメーションの仕事をしながらゲーム会社の仕事をしていた時期がありまして。プレイステーションのゲーム版『スパイダーマン』の声が好きで。「このスパイダーマン、すごくスパイダーマンしてて良いなぁ」と思ってよくプレイしていたんですよ。全然リキみがなくて、格好つけてない。軽口を叩いて敵の容姿をいじったり、自分のピンチの状況をジョークにしたり。でも頭の中では「次にこの攻撃を受けたらまずい」とか考えていて。それがゲーム内にも反映されていて、本当にアメコミのテイストで作られたものだったんです。そのスパイダーマンの声優が三木さんだったんです。自分はあまり声優には詳しくないんですけど、EDで“三木眞一郎”って名前を見て「この人がスパイダーマンを演じた人なんだ」と認識したんですよ。だから三木さんは自分の中でスパイダーマンの人なんです。それで前にお会いしたときにその話をしたら、三木さんは「役に大きい、小さいはないんですけど、仕事としてはすごく短かったし、それを覚えていてくださってありがとうございます」と言葉をいただきました。

──三木さんは『スパイダーマン』で何か覚えていらっしゃいますか?

三木ディレクターさんに「何個かアドリブをお願いします」と言われていて。急いで戻らなきゃいけない時に雨が降ってきたシーンで「あっ、洗濯物が!」ってセリフを入れたのを覚えています。

──キャラクターを担当される際は、台本を読み込んで特徴を掴みますか?

三木あまり読み込まないです。キャラクターを好きになってしまうと、自分の考えと違うことを要求されたときに、頭の中で戦ってしまうんですよ。そうならないように、ある程度の知識だけの方がいいんです。こだわるなら、自分が監督をすればいいじゃないですか。好きではあるけれどもこだわりすぎない方が、キャラクターに対するアプローチとしてはいいんじゃないかと思っています。

長濵素晴らしいです。自分もキャラクターデザインの馬越(嘉彦)さんや、ディレクターのそ〜とめ(こういちろう)さんに「何人もが同じような熱量を持っているとぶつかっちゃうから、あなた(長濵)がいちばん好きでいればいい。皆、その好きを何とかして実現するという方向で動けばいいから」とずっと言われてきました。今回も「アメコミが好きなのは監督がいちばんなんだから、それでいいんですよ」と、三木さんと同じようなことを言われました。

──こだわらないわけではなくて、こだわりつつも分業していくということでしょうか?

長濵そうですね。アニメは皆で作り上げるものですから、方向を示す人間はひとりじゃないといけないんです。船頭が多くなると、船があっちこっち行ってしまうので。

エクスオンに「俺の人生、そうじゃないよ!」と言われたくないんです

──エクスオンは三木さんしかいらっしゃらないと感じられたのでしょうか?

長濵最初はそこまでは考えていませんでした。それも三木さんの言葉と一緒で、「三木さん最高だ! 三木さんでやりたい!」となってしまったら、エクスオンじゃなくなるわけですよ。なのでキャスティングの時は、フラットな状態で選びます。そもそも今回のエクスオンは、スタン(・リー)と「マスクを絶対脱がないスパイダーマン、みたいなキャラクターを作ろう!」という話でできたものなんですよ。三木さんが“スパイダーマンを演じた人”というのは頭にあったんです。そんな状況で「どなたか演じてもらいたい方はいらっしゃいますか?」と言われたので、「ゲームでスパイダーマンを演じていた人に来てもらって、とりあえず一度会わせてもらおう」と、アバウトな状態で呼んでいただきました(笑)。さらに三木さんは『X-MEN』シリーズでは“マグニートー”の吹き替えを担当されています。今回の音楽ディレクターをやってくださってる野崎(圭一)さんとキャスト決定より前にロンドンに音撮りに行った際、飛行機の機内で『X-MEN:アポカリプス』を観たんです。自分は全作劇場で観ていたのですが、吹き替え版となると上映館が極端に少なくて観られずにいたんです。普段は吹き替え版だと、どうしても向こうの役者さんの感情の動きとズレが生じてしまうので、キャラクターの演技で泣けることは少ないんですが、三木さん演じるマグニートーに号泣したんですよ。ロンドンに着くなり、「X-MENのマグニートーがすごくってね…」と野崎さんに話したら、たまたま野崎さんも同じものを観ていて。「めちゃくちゃ泣けたんですよあれ…吹き替え版ですよね? 三木さんじゃないかな…?」とおっしゃって、「うわ、やっぱり! 上手いなー! すげーなぁ!」って盛り上がったんです。野崎さんも「吹き替えで泣くことはなかなか無い」と言われていました。でも、そういう三木さんの声に衝撃を受けた記憶があったから、エクスオンを担当していただいたわけではないんです。最初に言ったようにフラットな気持ちで選んでいます。ただ、エクスオンをどう作っていくか? という時に、結局自分たちは“キャラクターと心中してくれる人”を求めちゃうんですよ。「このキャラクターは俺のもんだ!」「誰にもやらせない!」と思ってくれる人を探した結果、三木さんに担当していただこうと落ち着きました。

──それはオーディションという形だったのですか?

長濵オーディションは行なってないです。ただ名前はズラーっと上がりましたね。いろんなサンプルボイスも聞いたりしました。だけど、エクスオンを選ぶとしたら三木さんがいいでしょうねと。ずっとべた褒めしてました。

三木もうそろそろ帰った方がいいかな(笑)? 心中するっていうのはそうなんですけど、まず役に嫌われたくないんですよ。選んでくださったことに対してはとても感謝していますし、ありがたいことです。その上で、僕は役を立体化しなければいけない。フィクションだけど、この世界で生きているエクスオンというキャラクターが、台本的には記号で書かれているので、それを僕の声帯を通してエクスオンの血と肉があるセリフにしなければいけないわけです。例えば自分が死んだとき、誰かがお別れ会で自分の半生を「こんな人でした」のようなドラマ仕立ての動画を作ってくれたとするじゃないですか。そんな時に自分の嫌いな役者に絶対自分の役をやってほしくないんです。きっとキャラクターもそうだと思うんです。

長濵わかりますねぇ、わかります(笑)。

三木エクスオンに「俺の人生、そうじゃないよ!」と言われたくないんです。エクスオンが俺の声や演技を認めてくれるだろうか? そして長濵さんやスタッフの人たちが俺を認めてくれるだろうかっていう、「僕でどうだ!」というより「僕を認めてもらえるかな?」という気持ちが先なんです。

スタンはずっとスパイダーマンやX-MENなど“人間だからこそ”というヒーロー像を追いかけているんです

──今回はオリジナルのエピソードで、しかもスパイダーマンのように誰もが知ってるキャラクターではない“新たなヒーロー”です。視聴者にはどのように楽しんでいただきたいですか。

三木皆があの世界に入った一員だと思ってこの作品を観てくださるのがいちばんいいと思います。「この人どういうキャラクターなんだろう?」と考える方がこの作品は面白いんじゃないかと思います。その上で必要な情報は入ってくるし。その世界に浸ってしまった方が視聴しやすいという気はしますね。

長濵視覚で入ってくる情報がそれ以上でも以下でないというか、自分が得た情報が全てだと思ってほしいんですよ。人と人が、こうやって向かい合って喋っていても、全く見えないことの方が多いじゃないですか。それと同じことなんですよ。

──設定など詳細をお聞きになられた上で 声をあてるというのは、かなりハードルは高かったのではないでしょうか?

三木詳細っていうか、彼の“履歴書”ですよね。履歴書がないとセリフが全部嘘になるので。でも「履歴書ください」って言うと嫌がる監督や演出家の方もいらっしゃるんですが、長濵さんは僕が言う前にくださったんです。

長濵あれを作るのは相当エネルギーが必要でした。要はエクスオンの年表みたいなものですからね。三木さんに渡したものは本当に時系列に沿って書いたもので、他の誰にも公開していないんです。大体の内容を知ってるスタッフはたくさんいるんですが、それでも三木さんに渡したものがいちばん詳しいと思います。脚本陣も全部は知らないんです。

三木密度がものすごく濃くて。これは監督にもお話させていただいたんですが、僕はそれを読んでマジで泣きました。

──それは経歴の悲しさにでしょうか?

三木その経歴が悲しいかどうか受け取り方は人にもよると思いますので、ただその時の僕はそういうふうに思ったということです。これからの展開を楽しみにしていてください。

長濵今回本編にはいろんなヒーローが出てくるんですけど、ちょっと違った見方をすると、超人であって人間ではない“ロボットのようなもの”とか、“怪獣のようなもの”みたいにカテゴライズされてしまうんですよ。けれど彼らは“人間”という根底がある。スタンはずっとスパイダーマンやX-MENなど“人間だからこそ”というヒーロー像を追いかけているんです。“宇宙人”や“超越した存在”が、人間の生活の中に入り込む余地はなかなか無い。だけど隣の人間が突然空を飛べるようになったら、それの方がよっぽどドラマがあるじゃないですか。“飛べるようになったんだけどどうしよう?と相談された僕”、これでもうドラマが作れるんですよ。スタンがずっと人の目線で描き続けてきたように、この作品もそう作れればいいなと思っています。顔は見えない、表情もわからない、スーツを脱ぐこともないから人間かどうかも怪しい。だけど意図として、“エクスオンは人間なんだ”ということをちゃんと感じさせたいんです。だから役者として全部できて全部捨てられる人っていうのが、実は選考の中ではいちばん大きい要素だったりするんですよ。「何でもできます、七色の色出せます。でもその中でかぎりなく黒に近い赤のみを演じることができる」ここ一点ですね。それをアフレコで追求し続けているんです。でもたまに「三木さん今ちょっと赤が強すぎたかなー?」みたいなことはあります(笑)。

三木ですよね(笑)。僕はエクスオンとしての声帯、唯一発することのできる生の音を任されているわけです。それに対して責任を取りたいし、その上で時間がかかってもいいとおっしゃってくださるのであれば、僕は「何回でもやりますよ」と言いたい。僕らの仕事ってセリフや、もしくは一言に何かを想起させなきゃいけないんですよ。でもエクスオンの履歴書を読んだ以上、僕のDNAにもエクスオンのDNAが入ってるので、自分との戦いですよ。

そこはもうはっきり「俺には何にも言えない」と言います(笑)

──アフレコはどのような雰囲気だったのでしょうか?

三木和やかではありました。

長濵ただ三木さんの思いとか、マイク前に立つ感情は誰にも想像できないですよ。三木さんだけ世界が違って見えているんですから。

三木それはもう、どうにもならないですよね。

──“エクスオン”というキャラクターが、他の役者陣とは別に見えているわけですね。

長濵これはもうスタンの作品全てに言えることですが、なぜこの格好をしているのかとか、なぜこの色なのかとか、全部理由があるんですよね。だけどその理由は役者さんたちは知らないんです。理由を伝えている三木さんだけは自分と同じ見え方をしているわけですよ。

──共演されている方から「エクスオンとは一体何なんですか?」と言われたりしませんか?

三木そこはもうはっきり「俺には何にも言えない」と言います(笑)。あえてわかりやすくいうと、モブに近いんだと思います。通り過ぎていくだけの人なんですよ。でもどの役も必要だから作品にいるわけで、本当に難しいんです。この仕事に就いてもうすぐ30年になりますが、いくつになってもやっぱり難しいものは難しいんだなと思います。歳を取ったら楽になると思っていたんですけど、そうはならないですね(笑)。

長濵本当に楽になんかならないんですよね(笑)。そんな中で三木さんのセリフはほとんど一言に近いわけじゃないですか。だけどこの先のキャラクター性も、話がどう転んでいくかわからないってことも、三木さんにその一発で決めてほしいんですよ。周りに「あーこうやつね」みたいなことを一切言わせたくなかったんです。「えっ! この人喋った?」ぐらいに持っていき、「全然わかんないけど、多分何かが起こっていくんだろうし、この人のこと追っかけていたらわかるのかな?」というところに、第1話のラストを持っていってほしかったんです。だからすごく重かったと思います。

三木僕、長濵さんの情熱がすごいところが大好きなんです。それはもの作りの上で必要なもの、とても大事なものなので、僕はその熱をしっかりと受け取っています。現場での熱というのは、分業とはいえチームで作っていき、同じ空気を吸うということ。長濵さんは同じ空気を共有しようとしてくださっているし、そんなスタジオに居られることが、すごく幸せだなと思います。

──全ての情報をご存知のお二方だけが同じ空気を共有できる、ということでもないのでしょうか。

三木僕はエクスオンに関しては知っていますけど、逆に全体は知らないですからね(笑)。だから“船”なんですよ。役というのは船のオールの一本でしかなくて。それは主役だろうと脇役だろうと、任せていただいた人の人生を任されているという意味では、どんな役でも一本のオールということに変わりないわけです。声優が皆船の漕ぎ手で、そこで船長(監督)がいて。誰かが「俺、脇役だから」と言って休んでいたら、船はまっすぐ進まない。誰もが怠けずちゃんとオールを漕ぐという意識を共有できるのは、スタジオという空間で同じ空気を吸うことなんですよ。それは声優以外でも制作をしてくださっている方たち、作画の方だったり、背景だったり音楽だったり…皆さん様々なオールを持っていらっしゃる。皆がそれを自覚することで船は勢い良く、確実な航路で目的地に進んでいけるんですよ。そういう意味でとても素敵な船長(監督)だと思っています。

長濵それ、こっちのセリフですよ! 全部こっちのセリフです(笑)。熱の話もそっくりそのままお返ししたいです! エクスオンに関してはまだまだどんなものかもわかってないわけですから。今後も皆さんがびっくりする展開が待っています。どんどん面白くなっていきますから。どうぞよろしくお願いします!

の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。

PROFILE

長濵博史(ながはまひろし)
3月15日生まれ、大分県出身。アニメーターとして『少女革命ウテナ』や『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』などの作品で作画監督を担当し、注目を集める。その後『蟲師』や『惡の華』で監督を務めた。

PROFILE

三木眞一郎(みきしんいちろう)
3月18日生まれ、東京都出身。81プロデュース所属。代表作に『頭文字〈イニシャル〉D』藤原拓海役、『BLEACH』浦原喜助役、『機動戦士ガンダム00』ロックオン・ストラトス役、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』ロイ・マスタング役など。

<放送情報>

毎週土曜23時〜NHK総合テレビにて放送中!

<Blu-ray BOX発売情報>
THE REFLECTION WAVE ONE Blu-ray BOX
2018年2月23日発売
Blu-ray BOX初回限定版:¥35,000(税抜)
Blu-ray BOX特装限定版:¥24,000(税抜)

【BANDAI VISUAL CLUB 限定特典】
150名様限定! マーベルの生ける伝説“スタン・リー”直筆サイン色紙付
Blu-ray BOX初回限定版:¥35,000(税抜)
特設サイト: https://bvc.bandaivisual.co.jp/feature/239/



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