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誰も見たことのない深宇宙へ…豪華スタッフが贈るマインド・トランスSF!『ID-0(アイディー・ゼロ)』興津和幸インタビュー全文掲載

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監督:谷口悟朗(『コードギアス 反逆のルルーシュ』シリーズ)×シリーズ構成・脚本:黒田洋介(『機動戦士ガンダム00』)×アニメーション制作:サンジゲン(『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』)ら豪華スタッフ陣が贈るSFロボットアニメーション『ID-0』のBlu-ray BOX&DVD BOXが、いよいよ2017年8月29日に発売される! そこで今回は、記憶喪失の主人公・イドという難しい役どころを見事に演じきった興津和幸さんにインタビュー。興津さんが最後まで演じきれたのには、ある理由があった!?

イドと同じ状態で演じることになるんだと実感しました

──まず率直にお聞きします。イドを演じて難しかったのはどんなところでしょうか?

興津「人間である時の記憶が無い」というお芝居が難しかったですね。第1話の段階では、イドは自分が「エスカベイト社の社員で、オリハルトを掘ることに信念を持つエバートランサー」であるという自己認識を持っています。初めて「自分には過去の記憶がない」ということを認識したとき、とてつもなく不安な気持ちになったはずです。アフレコの前に監督がキャストを集めて設定の共通認識を作る説明会があったんですが、そこで自分だけは何も教えてもらえなかったんですよ。イドが知らないことは僕も知らなくていいということだったんです。その時、イドと同じ状態で演じることになるんだと実感しました。

──それはイドに共感することに繋がったんでしょうか、それとも最初のイドのように不安になったのでしょうか?

興津不安はありましたが、必要な時になると監督が情報を与えてくれました。それに対して素直に演じていくことが今やるべきことなんだなと思ったら、気持ちが吹っ切れました。次から次へと謎が湧いてくるので、知らないことだらけなんですよ。そのたびに、この情報はイドの過去にとってこういうことなのかもしれないって考えました。本当に「俺は誰だ?」って思いながらイドを演じることになったので、監督にしてやられたなと思いますね(笑)。

自分の過去を知ったことによって、イドとしてはようやく腰を据えた

──第9話〜第10話でようやくイドの正体が明らかになりましたね。

興津やっぱりケイン(・アリスガワ)だったんだ!って思いました(笑)。“実はケインだった”という自分の過去を知ったことによって、イドとしてはようやく腰を据えたというか。今までふわふわしていた謎が明らかになってからは、台詞にも今までとは違った自信が出てきましたし、また別の感覚に一気にステップアップしましたね。でもケインとしての記憶は戻りますが、マインドトランスすることによって人間の記憶が全てコピーできるかというと、実はそうではないらしくって。人間の記憶容量が大きすぎてメカの中には入りきらない部分があるそうです。イドは一度ケインの体に戻ったときに、ある程度の記憶を取り戻しますが、それがどこまでの記憶なのか、明確には分からないんです。その曖昧な部分があることで、イドというキャラクターと他のキャラクターとの関係性が変わりますよね。イドとアダムス(・フォルテ・シュヴァリエ)のぎこちなさ、歯車の噛み合わなさにも影響しているのかなと。アダムスにとってのケインは人類の敵で悪魔のような男ですが、イド自身は世界を救うために行動している。それが後半の面白さを引きだしているんだと思います。

──「俺は誰か分からないけどイドだ」と言っていた前半と、「ケインだったけど今はイドなんだ」と言いきった後半。この差にイドの中に起きた変化を感じました。

興津「記憶が戻ったから、俺はケインなんだ」という部分は間違いなくあるんですが、「今の俺はエスカベイト社のイドとして生きているんだ」という気持ち、それがイドの中で確固たるものになったんだと思います。これは仲間との絆があったからこそだと感じました。

──話が進んで謎が解けていくごとに、視聴者が感じるこの作品の魅力も変化していると思います。

興津セリフを一言聞き逃すだけでも別の受け取り方になったりして、本当に情報量が多い作品だと思います。テレビで聞き逃しちゃった! という方はぜひBlu-ray BOX&DVD BOXで何度でも観返して欲しいです(笑)。

──ケインを演じられた緑川さんと、何か打ち合わせされたことはありましたか?

興津やっぱり僕は僕でイドですけど、根底はケインでもあるので、緑川さんのお芝居は無意識のうちにですが、意識していたと思います。でも、具体的に演技について何かを打ち合わせたことはありません。

名前を呼び続けてくれるヒロインがいてくれた

──ケインには引っ張られず、あくまでもイドとして何を為すかということに注力を?

興津そうですね。作中でケインは悪い人として描かれていて、現場でも途中から「イド最悪だね」って皆が言い始めました(笑)。「そんなことはない。イドはイドですよ!」って僕は思うんですけど、過去は消せないじゃないですか。イドにはそんなことをした記憶がないけれど、「自分は悪いやつなのかもしれない」っていう不安はやっぱり湧いてきてしまうので、その不安に打ち勝つためにはどうすればいいのかが僕の演技テーマでしたね。

──不安に打ち勝つことはできたんでしょうか?

興津それはね、(ミクリ・)マヤのおかげです。彼女がいないと僕は駄目でしたね。「イドさん、イドさん」って最初からずっと言い続けてくれるじゃないですか。見せ場の有無とかじゃなくて、ずっとイドの名前を呼び続けてくれることが、『ID-0』という作品のヒロインである意味なんです。いつもそばにいてくれて、自分のことを安心させてくれる。「貴方は貴方なんですよ」って言ってくれる存在は、ヒロイン以外の何者でもないだろうと僕は思うんです。

──そんなマヤがいてくれたからこそ、イドを演じ切れたと。

興津役を演じていく中で、自分の設定を信じられなくなって不安になるようなことは今までの作品では一切無かったです(笑)。この作品は“自分は何者なのか”という哲学が根本にあるテーマだと思います。その上にギャグがあって、可愛いマスコット、美少女やお姉さん、さらにはイケメンといった魅力的なキャラクターがいることで、哲学的な部分と調和していると思います。最初に作られたソーラン節のPVにもちゃんと意味がありました。この作品でソーラン節が持つ意味、最終話まで観てしっかりと確認して欲しいです。

リックのあのバイタリティは、カッコイイなぁと思います(笑)

──本作は個性的なキャラクターが多かったですが、興津さんのお気に入りは?

興津みんなお気に入りですけど、友達になりたいのはファルザです(笑)。言葉は通じないのに意思が通じ合ってるって、すごいですよね。イドに懐いてくれていて、孤独なときに気遣って話しかけてくれるんです。それと、リック(・エイヤー)には憧れますね。陽気さと真面目さのギャップ、そしていつでも女の子にコンタクトを取ろうとするあのバイタリティは、カッコイイなぁと思います(笑)。松風さんの演技は本当に最高でしたね。「自由に演技をしてください」と監督が最初に仰ってくれたので、皆さんのお芝居の自然な良さというか、そういうものが全面に押し出されていると思います。

──アドリブもあったんでしょうか?

興津皆さんセリフは台本通りなんですが、テンションの振り幅が自由なんですよ。どんなにやりすぎてもいいんです。同じ台詞でも言い方一つで全然変わりますし、その台詞を受けて返す側もまた違う演技になっていきますから。そういう変化が、皆でお芝居しているんだなと実感できて楽しかったですね。

──他の現場にはない、この現場だけの楽しさはありましたか?

興津CG作画作業よりアフレコが先だったので、「お芝居で絵を引っ張っていってください」と最初に言われて、皆が持てる限りの全力を注ぎ込んで演じていましたね。スタジオで皆さんのセリフを聞くのがすごく面白かったですよ。僕も一緒に叫びたい!っていう気持ちになったんですけど、「いやイドはいいです」「ごめんなさい落ち着いてくださいクールになって」と言われて(笑)。戦闘になると効果音が入るじゃないですか。それで戦っている感じは十分伝わるんですが、やっぱり敵を殴る時には「ハァーッ!」と言いたくなるんです。でも「イドはメカだからいらないのかな、そういうバランスはどうしよう」と悩んだ部分もありました。

──元々は生身の人間がメカに入っている、ということの難しさに繋がりますよね。

興津人間って息で感情を伝えるじゃないですか? ため息を吐いたり、ちょっとした笑いだったり。それをメカがやるのかどうか? しかも寡黙な男だから、息もしないとなると何もできなかった(笑)。

子安さんの台詞は名台詞が多いので、もう第9話から最終回までは名台詞だらけですよ

──興津さんのお気に入りのシーンや台詞を教えてください。

興津第9話ラストの「俺は何者だ!?」「俺は誰だ!?」から第10話の「俺はエスカベイターのイドだ!」の、あの一連の流れは演じていて楽しかったですね。この作品でやってきたことの全てがここに集約されているなって思いました。あとアダムスの「大正解!」も面白かった(笑)。子安さんの台詞は名台詞が多いので、もう第9話から最終回までは名台詞だらけですよ。しかも演技に合わせて動きもしっかりとついていて、あまりの完成度の高さに驚きました。

──物語終盤はアダムスとの対決シーンが多くなりましたが、アフレコはどのような雰囲気で行われていたのでしょうか?

興津楽しかったですよ。二人とも同時に解き放たれて(笑)。前半の子安さんはずっと白眉老人と悪巧みしてフフフフ、ハハハハと笑ってるだけ…でしたけどね(笑)。子安さんは最初の打ち合わせで、最後にイドと戦うという話は聞いていたらしくって、そこまでのフラストレーションを最後に吐き出せることがわかっていたんです(笑)。僕も「クールに演じて」と言われ続けましたが、子安さんから「大丈夫だよ、最後に戦えるから」と聞いて、それまでは我慢しようと思って演じていたんです(笑)。ようやく解き放たれたのが、第9話からですね。

──お二人の感情の爆発が全部そこに詰まっているんですね。

興津そうですね。アダムスが今まで30年分溜め込んできた、ケインへの思いを爆発させるシーンでしたからね。最初のうちは僕も同じくらいのテンションで演じるんですが、30年分の重みを抱えるアダムスには圧倒されるものがありました。あの数話の中で、本当に興奮している人には自分が落ち着いて気遣いながら話しかけないと聞いてもらえないんだなと、気づきました(笑)。アダムスが「俺が世界を救うんだ、わははー!」ってなっているときにイドがちょっと優しく話しかけるシーンがあるので、ぜひ注目していただければと思います(笑)。

──そのおかげか、最後にはアダムスもちょっと落ち着きましたね。

興津悟りを開きましたよね。「俺の人生を完結させてくれ」って…あれも名台詞です。彼は救世主として名を残したがっていました。名を残すのが大事なことなのか、何のために事を成そうとするのか、彼の行動を考えてみるとこれがまた深いんですよ。もちろんこの作品はイドの物語ですが、アダムスが何を思って生きてきたかということも考えながら、是非もう一度観ていただきたいです。

──最後に、最終話まで観て頂いた視聴者の方へメッセージをお願いします。

興津最後まで観てくださった皆様、本当にありがとうございました。途中で観るのを止めちゃったよという人は、ついにBlu-ray BOX&DVD BOXが出ます! 一気に観て頂けて、そして何度でも楽しめる作品に仕上がっておりますので、ぜひともご自宅の棚に並べて頂けたらなと思います。僕にとっては間違いなく、一生の思い出となる作品でした!

の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。

Profile

興津和幸(おきつかずゆき)
1980年生まれ、兵庫県出身。ケッケコーポレーション所属。『ジョジョの奇妙な冒険』ジョナサン・ジョースター役で一躍話題となる。代表作は他に『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』千早群像役や、『ガンダムビルドファイターズトライ』サカイ・ミナト役など。

<Blu-ray&DVD発売情報>

ID-0 Blu-ray BOX【特装限定版】
2017年8月29日発売
Blu-ray BOX:¥36,000(税抜)

ID-0 DVD BOX【特装限定版】
2017年8月29日発売
DVD BOX:¥18,000(税抜)

ID-0 公式サイト

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