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美少女チャンバラアクション『十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密-』スタッフ座談会

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剣豪・柳生十兵衛の後継者…それは究極の「ぽちゃぽちゃのぷりんぷりんのぼんぼーん」だった!? 大地丙太郎(総監督)×桜井弘明(監督)×吉松孝博(アニメーションキャラクターデザイン)の強力トリオによるハイパーテンションな美少女剣豪活劇の決定版『十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密-』がBlu-ray BOXで遂に登場! そんなBlu-ray BOXの発売を記念して、今回は制作スタッフによる座談会を実施。三人の出会いから思い出に残っているエピソードまで、ぶっちゃけトーク満載のスペシャル座談会はファンならずとも見逃せないぞ!

写真左から吉松孝博さん(アニメーションキャラクターデザイン)、
大地丙太郎さん(総監督)、桜井弘明さん(監督)

ギャグだったり、キャスティングだったり、
かなり『マサルさん』の影響を受けているんです

──皆さんは本作以外にも『風まかせ月影蘭』など様々な作品で一緒に仕事をされていますが、ご自身で“ウマが合う”と思った瞬間などはありますか?

大地 ウマが合った瞬間はだいぶ遡りますね(笑)。桜井さんとは『赤ずきんチャチャ』(1994年放送)の制作が始まるちょっと前に作品とは全然関係のない飲み会の席で会ったのが初めてでした。ただ、その時はお互いに同じ作品をやるとは全く思ってなくて、一緒にやると知ったのはその後だったかな?

桜井 そうですね。飲み会の席では同じ作品をやるとは知らなくて、別の日にその事実を知ったんです。

大地 それで、桜井さんがやるんだったら一緒にやりたいなと思って僕も仲間に入れてもらったんです。それが出会いですけど、実際に色々と話をすることになったのは『赤ずきんチャチャ』の現場ですね。その現場で楽しいこと、悲しいこと、苦しいことなど数々の苦楽を共にしたんです。

桜井 ほとんどが苦しいことばかりだったと思いますけどね(笑)。

大地 その後に『ナースエンジェルりりかSOS』(1995年放送)の話があったんです。僕の監督デビュー作品だったんですけど、制作が『赤ずきんチャチャ』と同じスタジオ(ぎゃろっぷ)だったので、桜井さんがいれば初監督でもできるかなって思ったんです。桜井さんには本当に色んな面で助けてもらいました。あとは、やっぱり『こどものおもちゃ』(1996年〜1998年放送)ですね。これを乗り越えられたことが大きかったと思います。この作品に関しては本当に苦しいことの連続でしたから。

桜井 ただ、別の仕事の関係で僕は途中で抜けてしまったんです。

大地 でも、あの立ち上げの時にいてくれたのは大きかったですね。僕の奥さん曰く、今までで一番辛そうな時期だったと言っているくらいですから。それで『こどものおもちゃ』が終わって、次の『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(1998年放送)の時にまた一緒にやることになったんです。そういうこともあってか、この『十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密-』はギャグだったり、キャスティングだったり、かなり『マサルさん』の影響を受けているんです。(三本松)番太郎のキャラクターをどうしようか考えていた時に、マサルさんがいたので、そのまま持ってきたという感じですしね。それで吉松さんとは、この『十兵衛ちゃん』の制作をマッドハウスがやるとなった時に、正直ここからの話は記憶が曖昧なんですけど、僕と一緒にやりたいと言っている人がいるってマッドハウスの当時の社長だった丸山(正雄)さんから聞いたんです。それが吉松さんだったと思うんですけど、実際はどうだったの?

吉松 大まかに言うと、そういうことになるのかな〜(笑)。丸山さんから「大地さんがマッドハウス作品で監督することになったんだけど、大地さんって知ってる?」みたいなことを聞かれて、僕は「大地さんの作品は面白くて好きですね」って言ったら、「あ、そう、分かった」みたいな(笑)。

大地 へぇ〜、そうだったんだ。じゃあ、丸山さんがお見合いを無理矢理に成立させたみたいな(笑)。きっとウマが合うと思ったんだろうね。それで一緒に仕事を始めたら、全くストレスなくできたので、良い人に巡り会わせて頂いたなと。さすがと言える仲人ぶりでしたね(笑)。

──ちなみに、桜井さんと吉松さんは本作『十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密-』の時に初めて会われたのですか?

桜井 そうですね。『十兵衛ちゃん』が最初で、その後に『天使になるもんっ!』(1999年放送)や『風まかせ月影蘭』(2000年放送)をはじめ、『レ・ミゼラブル 少女コゼット』(2007年放送)などで一緒に仕事をすることになるんです。

自分の中では何でもパターン化されてしまうというのが嫌だったんです

──吉松さんはアニメーションキャラクターデザインを務めていましたが、キャラクターをデザインする作業で思い出に残っているエピソードなどはありますか?

吉松 そうですね。一番最初にキャラクターのデザインを見せた時に、桜井さんからめちゃくちゃダメ出しされたのは覚えてますね(笑)。

桜井 えっ、本当に? 覚えてないな(笑)。

吉松 僕は『十兵衛ちゃん』の前に、同じマッドハウス作品の『TRIGUN』(1998年放送)に参加していたんですけど、『十兵衛ちゃん』ではアニメチックな絵が良いのかなって思ってデザインしていたんです。そうしたら、桜井さんから「こういうの止めて」「ああいうの止めて」って、まさにダメ出しの嵐ですよ(笑)。顎のこういうラインは止めてみたいな。

桜井 ああ、思い出してきた。あの頃、いわゆるアニメ絵というものに自分の中で反発があったんです。

吉松 そういうのじゃないんだって。それで軽いカルチャーショックを受けて…。

桜井 それはすみませんでした。

吉松 でも、今思うと有り難かったというか、とても感謝しているんです。アニメーションのキャラクターデザイナー人生を今まで歩んでこれたのは、そこでカルチャーショックを受けたおかげなのかなって。アニメの濃い絵って、どんどん突き詰めていくと鼻持ちならない訳の分からないものになっていくことが多くて、そこに歯止めをかけてくれたんです。

桜井 自分の中では何でもパターン化されてしまうというのが嫌だったんだと思います。今も好きではないので、たぶんそういうことだったんじゃないかなと。

大地 当時流行っていて、僕たちも最初の頃『赤ずきんチャチャ』とかで結構使っていたんですけど、怒りマークが出るとか、冷や汗マークが出るとか、でも使うのは1回でいいんです。それで周りが使い始めたら使うのを止めようぜっていう話はしていましたね。

桜井 汗マークもどんどん大きくなっていったり。終いには汗が丸くなったり、もうそれは汗じゃないだろって(笑)。

大地 そういう風にパターン化というか記号化されてしまうとオリジナル性も失われるし、あの頃はかなり厳しかったと思います。

桜井 自分たちの中では王道を行ってないつもりだったからね。

この『十兵衛ちゃん』ではテンポ、リズム、間には相当こだわっていた

──演出面でこだわったポイントがあれば教えてください。

桜井 今もそうなんですけど、驚くシーンで驚く前に一瞬ためるカット、あれはいらないだろうって。

大地 あったね。あれってずっとパターンだったんです。当時はどのアニメでもやっていたよね。

桜井 本当にそういうキャラだったらいいんですけど、どんなキャラでもみんなやっていて、そういうパターン化されているのが嫌だったですね。

大地 逆に、ためるカットがあって、さらにブルブルさせて息をフゥーって、そこまでやるんだったらいいんですよ、アメリカのコミックみたいに(笑)。

桜井 そうそう。『十兵衛ちゃん』でも柏倉(つとむ)さんが演じた天地無用之介みたいなキャラだったら思いっきりアニメチックにやった方がいいとは思いますけどね。

大地 そういう細かい部分で割とこだわっていましたね。他の作品でもそうだけど、目を見て話すのか目を見ないで話すのか、そういうところにもすごいこだわっていたかな。あと、キャラクターの距離感とかね。そんなに離れたらおかしいだろとか、当たり前の演出なんだけど、あの頃はパターン化されていて、どんな人にも向き合って話すのが当たり前の頃で、目を見て話していたらそういう感情にはならないよって。

桜井 それをわざとやるのはいいんです。そうした方が面白いっていう理由がしっかりあればそれはOKなんです。でも、やってみないと分からないというものが多かった。カッティング作業にしても、この間はいらないとか、今までの作品と『十兵衛ちゃん』では間が違うので、編集の尾形(治敏)さんは最初すごく苦労されていましたね。

大地 一コマ、二コマにすごいこだわっていて、桜井さんが「あと三コマ切ってください」って。動画なのに良く見えてるなって横にいながら思っていたり、でも、やっぱり三コマ切った方がアクションシーンの間とか格段に良くなっているんです。それは『マサルさん』の時からそうでしたね。

──この『十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密-』の魅力って、やっぱりテンポの良さにありますよね。

大地 そうですね。だから、テンポ、リズム、間には相当こだわっていましたね。

桜井 自分の間というのがあるんですけど、大地さんの間もあって、すごく勉強になりましたね。

吉松 この作品は演出の間が絶妙なんです。確か第5話「敵が思い出つれて来た」で、(小田豪)鯉之介と(津村)御影がテーブルを挟んでずっと何も喋らずただ座っているだけみたいなシーンがあるんです(笑)。

大地 ああいうの大好きなんだよね(笑)。

桜井 とりあえず音が流れているから大丈夫っていう。

吉松 絵コンテを見て思わず爆笑してしまいましたね。絵コンテでも実際にあのシーンが何コマも描いてあるんです。でも、最後の方になってくると鯉之介の顔がいい加減になってきて、ただのマルみたいな(笑)。

大地 あと鯉之介でいうと、あの頃、侍が出てくるアニメってあまりなかったので、侍的な鯱張った感じを演出するのがすごく楽しかったですね。

第1話のラッシュフィルムをチェックした時に、
全然マッドハウス作品に見えなくて、大笑いした記憶があります

──ご自身が感じる本作の見どころやオススメポイントを教えてください。

大地 僕が心に残っているのは第9話「恋の予感の父だった」で、みんなで餅つきをしているシーンがあるんですけど、あの空気感というか間が絶妙なんです。あの回の絵コンテを小島(正幸)さんに描いてもらったんですけど、初めてお願いしたにも関わらず、なんであの間を分かってくれるんだろうっていうくらい良い感じの空気感が出ているんです。物語的に一段落ついて、みんなで平和に餅つきをして、それぞれのんびりとした描写があるんです。そこに敵がやってきて(菜ノ花)自由が(竜乗寺)ハジメに会いに行くことになって、周りが「えっ、えっ、えっ!」ってなるこの間が素晴らしいんです。あの演出をやったのが長濱(博史)さんだったんですけど、いきなり入ってきてこのコンビすごいなって思ったのを今でも覚えています。あの回は特にアクションもそんなにないんだけど、コメディーの部分でいうと絶妙な回でしたね。

桜井 僕も第9話は印象に残っていますけど、僕としては第8話「頭にこんなの添えていた」もオススメですね。自由が高熱を出してお父さんの(菜ノ花)彩が熱を下げようと頭から水を被って自由を抱きしめるっていうシーンがあるんですけど、あれは脚本があがった時に実際に娘を持つ父親じゃなければ絵コンテは描けないなと思って大地さんにお願いしたんです。

大地 あれは自分でも色々と悩みながら描いた回で、音響監督の田中(一也/現:たなかかずや)さんも「どんな音楽をつければいいか分からない」みたいなことを言っていたのは覚えてますね。

桜井 でも、最終的には田中さんが良い感じの音楽をつけてくれたんです。あの当時、僕も独身で今は娘もいるんだけど、やっぱりあれは娘を持っていた大地さんじゃなきゃ描けないよなって。

──吉松さんがオススメする見どころやポイントは?

吉松 最初、第1話のラッシュチェックが始まった時に、全然マッドハウス作品に見えなくて、大笑いした記憶がありますね。「何コレ?」って(笑)。今はマッドハウスも色々な系統の作品を制作していて珍しくはないんですけど、当時のマッドハウス感が崩壊する様をご覧頂ければと思います。

<Blu-ray BOX発売情報>
十兵衛ちゃん–ラブリー眼帯の秘密- Blu-ray BOX 特装限定版【Amazon、BVC限定】
2016年1月29日発売
¥15,000(税抜)

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