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『翠星のガルガンティア〜めぐる航路、遥か〜』プロデューサー対談全文掲載

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4月4日より劇場上映を開始した『翠星のガルガンティア 〜めぐる航路、遥か〜 後編』のプロデューサーを務める3人の座談会が実現。本作品に対する熱い思いから、プロデューサーという仕事やその苦労まで、普段あまり聞くことのできない様々な話を語ってもらった。

ロボットアニメを
現代風に再解釈しようと考えた

―― まず最初に、OVAの制作が決定したのは、いつ頃だったのでしょうか?
平澤直(以下、平澤) TVシリーズの放送が始まって1ヵ月くらいが経って、観て頂いている方の感触も非常に良く、これは次があるんじゃないかと考え始め、最終的に制作が決定したのは最終話が放送された直後だったと思います。実際には第4話が放送される頃から考えてはいたんですが、終わってみた時の評価は大事だろうということで、待機していた感じだったんです。結果的に最後まで観て頂いた方の反響が良かったので、制作にゴーサインが出たという感じだったと思います。 菊川裕之(以下、菊川) そうですね。ただ、その時はまだOVAかどうかは決まってなくて、単純に続編を作りたいという話でした。その当時、小坂さんは劇場版がやりたいと仰られていたんです。 小坂崇氣(以下、小坂) 確かに言ってましたね(笑)。『魔法少女まどか☆マギカ』のモデルをイメージしていたので。同じように1クールでオリジナル作品で、脚本が虚淵(玄)という共通点が非常に多かったこともあって、当時そういう話をしていましたね。 平澤 OVAにして劇場にかけようとなったのも色々考えてそうなったんです。TVシリーズを観て頂いた方にどのくらい待って頂けるものか考えた時に、TVシリーズのシーズン2をやるという話になると時間が掛かり過ぎてしまうなと。この『ガルガンティア』の企画が動き出したのが2010年の夏頃で、放送が始まるまでに丸3年経っているんです。それと同じだけの時間をファンの方に待って頂くのは難しいのではという結論になり、OVAにしてまずは劇場で観て頂くのが一番良いのではとなったんです。
[V-STORAGE online 限定]―― 実際にOVAでの制作が決まった当初から前後編の予定だったのでしょうか?

平澤 これについても色々話しましたね(笑)。当時、小坂さんは2本か3本か、どちらかですねと仰っていたんです。ただ、三部作になった時に、どうしても2本目のエピソードが1本目と3本目の繋ぎになってしまうと思ったんです。その解決策として派手なシーンを沢山入れていくというやり方もあるんですが、それが今イチ『ガルガンティア』のファンの方が求めるものとは違うのではないかと。それだったら、シンプルに前後編にしてドラマをメインに描こうとなったんです。

―― OVAを制作するにあたって、前日譚であったり、違う船団の話であったり、様々な可能性があったと思うのですが、なぜTVシリーズの続編にされたのですか?

小坂 TVシリーズが最後あれだけ感動的にチェインバーを失って、これからのレドの成長を示唆するような終わり方をした。やっぱり単純に、その先を観たいという興味があるのではと思ったんです。

菊川 ファンの方は「まだ「ガルガンティア船団の世界観」を消化していないんじゃないか?」という思いが僕たちの中にあったんです。『ガルガンティア』が評価されている部分の一つに、船団の人々の生活がきちんと描かれているところがあると思うんです。村田(和也)監督もそう仰っていて、そこにまだまだ描ける要素があるんじゃないかということで続編という形にさせて頂きました。
―― 本作にはロボットアニメの要素もありますが、決して戦闘シーンがメインで描かれる訳ではありません。そのようにした理由を教えてください。
平澤 企画を立ち上げた時に最初に目指していたコンセプトが、戦闘を主眼としたロボットアニメではなかったというのがありました。 小坂 あと、村田監督の好みというか、ビジョンに寄り添っている部分もあったと思います。 平澤 村田監督に参加して頂く前に、最近あまりやってないタイプのロボットアニメを現代風に再解釈しようと、僕たちと虚淵さんで話していて、その中で自分たちが好きだったロボットアニメというのが戦争をしていないものだったんです。村田監督が合流する前から決まっていたものの中には、お仕事ものロボットというのがあって、『機動警察パトレイバー』[商品紹介]のような作品を今やるのならどうやるかというところから一番最初スタートして、虚淵さんが色々と構想を練ってくれたんです。そのコンセプトに村田監督が同調して入ってきてくれたんです。 小坂 虚淵の最初のプロットは、冒険ものみたいなイメージだったんです。確か舞台も地球ではなく水に覆われた惑星で、そこで遺跡発掘レースみたいなものをして、どのチームが最初に発掘するかそれが賭けの対象になっているといった話だったんです。そんなタイミングで村田監督と出会って、監督を依頼した時に「実は温めている企画があるんです」と、村田監督から見せられたのが船での水上生活や船の造形などを含めた美術ボードだったんです。 平澤 それはロボットものというよりは、ロボットが出てくる海洋冒険アクションといった感じのものでした。登場人物たちも割と軽装で、船の甲板の上を走り回っているようなイメージで作られていて、虚淵さんがそれにインスピレーションを受けて企画をがらっと作り変えていったんです。
[V-STORAGE online 限定]―― 村田監督は本作を「登場人物たちの成長物語」と仰っていましたが、シリーズの中で一番成長したと思うキャラクターは?

小坂 それはもちろん、レドですね(笑)。何しろ『ガルガンティア』はレドの成長を描いた物語ですから。

菊川 レド以外ないですね。レドにとっては、地球のみんなが先輩であり、先生なんです。

必要なのは
アイデアを実現させる実行力

―― プロデューサーとして作品と向き合う際に気をつけている点は? それと、苦労したことがあったら教えてください。
平澤 自分が持っている「売れるためのノウハウ」を押し付けてしまうことを気をつけますね。僕はそれをある恩人の言葉を借りて“オーバープロデュース”と呼んでいるんですけど、作品を作る際に、監督が一人で、シリーズ構成が一人という作品がほとんどなのに対して、プロデューサーって実は何人もいるんです。そういう人たちが「ある作品はこうやって売れました」とノウハウを押し付けてしまうと、結果として作品の独自性が失われていくんです。例えば、ライトノベルで学園ものが売れていたタイミングで、『ガルガンティア』にも学校があった方がいいんじゃないか、みたいな意見を出し過ぎると作品の本質が分からなくなってしまうんです。その作品にしかない唯一無二な魅力が逆に隠れてしまって、新鮮味が薄れてしまう可能性がある。そういうことはやらないようにしようと、この作品が教えてくれましたね。 小坂 ニトロプラスという会社自体が売れ筋などをあまり意識せず、自分たちが好きなものだったり、面白いと思うものだったりを啓蒙しようというスタンスで作っているんです。例えば、絵描きの人も流行りの人を外部から連れて来ようとか、そういう発想がないんです。とにかく社内で描ける人、作品のイメージに合う人を探して、自分たちの中にある好きなものをどう見せるかというのをずっとやってきたんです。ただ、アニメーションに関してはそれじゃ駄目なんです。様々な人たちが作品に関わっているし、ビジネスとして、ある程度の成功というものを見込みながらやっていかなくてはならないので…。そうなった時に、普段ならブレーキがかかるものもかからない場合があって、その打ち合わせが終わった後に、苛々しているクリエーターたちも大勢いるんです(笑)。そういうことを上手くコントロールしていくのもプロデューサーの大切な仕事ですね。 菊川 僕はプロデューサーとして本格デビューしたのがこの作品だったんですけど、一番考えていたことは、作品の軸がブレないようにしようと、それは常に頭の中にありました。それは作品の方向性だったり、宣伝の方向性だったり、色々なんですけど、作品としての方向性だけはしっかり提示できるようにと考えていました。あとは、小坂さんや平澤さんから次々と出てくるアイデアを実現させる実行力ですね(笑)。
―― プロデューサーという立場から見て、村田監督はどのような監督ですか?
小坂 作品に対して取り組む姿勢の真面目さについては敬服しますね。 平澤 これは村田監督ご自身が言っていたことなんですが、『風立ちぬ』の主人公が自分にそっくりだと仰っていたんです。とてもエンジニアっぽい方で、建築関係を勉強されていたということもあるかもしれませんが、考え方が理系なんです。柱を作って屋根を作ってという感じで、アプローチの仕方が凄くロジカルなんです。本当に建物を造るように作品を作っていく方ですね。 小坂 例えば、シナリオ会議の時にいきなり新しいシナリオを渡したりすると困惑されることもありました。村田監督は事前に読み込んで、じっくり時間をかけて準備するという方なんです。 菊川 作画についても緻密で、オーダーなども凄く明確なんです。決して、その場の思いつきでは言わないんです。 平澤 作品全体がきっちり見えていて、このエピソードの狙いはどういうもので、このカットはどうあるべきか、必ず物事を俯瞰で見ていて、決してブレないんです。だから、先週こう思っていたけど、今週こうですという、ひっくり返ることが本当に少なくて、監督をやられていると決定する回数が細かいものを入れれば千とか万とかあるんですけど、前に言っていたことと違うということが他の監督と比べると極端に少ないですね。普通オリジナルって目指す方向があったら、あっち行ったりこっち行ったり、蛇行を繰り返しながら作るものなんですけど、最初から目指すべき方向に向かうんです。まるでエンジニアが設計図を引くように作品を作られていく方で、その設計図も我々がビックリしてしまうくらい正確なんです。

[V-STORAGE online 限定]

菊川 そんなこと言ってましたっけ? ということがほとんどない監督ですね。 平澤 思いつくところでは、第1話冒頭の宇宙戦闘のシーンで外部の音を無音にするしないの件くらいだったと思います。最初の頃は『プラネテス』[商品紹介]のような爆発音がしないという方向だったんですけど、結果として音を入れることになったんです。覚えている限りでは本当にそれくらいですね。あと、作り方のアプローチとは別に、作品の要素(キャラクター、ストーリー、テーマ、世界観など)の中でどこが好きかという言い方をすると、大抵の監督はキャラクターやストーリーが好きだったりするんですけど、村田監督はその中で建物だったり、世界観に思い入れが強い監督ですよね。『ガルガンティア』で言えば、画面設計の時は必ずキャラクターの足が背景に付いている場所を入れるというか、顔のアップだったり、バストショットだけではなくて、足まで入っているようなショットが非常に多いんです。それはなぜかと言うと、作品の世界を観て欲しいからで、その世界の中にキャラクターがいると思って欲しいからなんです。そういう意味で、世界観を凄く大事にされている監督ですね。『ガルガンティア』の美味しい部分が世界観にあったりするんですが、視聴者の方は基本的にキャラクターやストーリーを注視すると思うので、その興味を如何にして世界観まで繋げていくか、そこにこの作品ならではの試行錯誤があったように思います。 小坂 船団自体は村田監督が生み出されたようなものなので、そこに対する思い入れは非常に強いですよね。例えば、画面作りで言うと、バストショットだったら背景がなくてもごまかせるんですけど、カメラ位置が引いているので背景を入れざるを得ないんです。でもそれが作品の魅力になっていると思います。
―― 前編のラストシーンで、リーマとマズルが会話するシーンがありましたが、両者の関係性は?
菊川 物語の核心となる部分なので言い方が難しいんですけど、一つ言えるのは、人間とAIの関係性として、レドとチェインバーの関係とはちょっと違っているということですね。 平澤 レドたちとはまた違う意思疎通の仕方をしているというか、ご覧頂いていないファンの方に伝えるのは本当に難しいですね(笑)。ただ一つ言えることは、レドとチェインバーとも違うし、クーゲルとストライカーとも違う、また別の関係性になっているのは観て頂ければ分かってもらえると思っています。この辺で勘弁してください(笑)。 小坂 世界は広くて、今まで『ガルガンティア』で描いていたのは、ガルガンティア船団の周りだけだったんですけど、その広がりを予感させる存在がリーマというキャラクターなんです。
[V-STORAGE online 限定]―― OVA後編の見どころ&オススメポイントを教えてください。

菊川 ガルガンティア船団が本当の意味で危機に陥ります。前編では描かれなかったメカアクションだったり、ロボットバトルが楽しめると思います。期待していてください。

平澤 あと、全国の石川界人さん(レド役)のファンの皆さんにも“キュン”として頂けるでしょうし、石川界人さんが「好きだ」と公言されているリーマファンにも楽しんで頂ける部分があると思います。前編よりもキャラクターのドラマが前面に出てきますので、その辺が後編の見どころですね。 小坂 あまり言い過ぎてしまうのもつまらないし、観る方によって楽しむポイントも違いますし、それぞれが様々な妄想を巡らせて上映まで待っていて欲しいですね。

船団の仲間たちと同じように連携しながら
我々も大航海を続けてきた

―― 改めて振り返ってみて、ご自身にとって『翠星のガルガンティア』とは?
菊川 お仕事ものということで言えば、僕的にはまさにプロデューサーという仕事を学ばせてもらった作品ですね(笑)。 小坂 全員がロボットアニメが好きというところから企画がスタートし、ロボットアニメを一緒に作ろうと集まりました。実際に作品を作っていると、最初の頃から最後の頃では調和がイメージ通りに取れてないケースって意外とあると思うんですけど、『ガルガンティア』ではバンダイビジュアルさんとProduction I.Gさん、そして弊社と、それぞれが最初の取り組みの気持ちを維持したまま最後まで走り切れた作品だったと思います。『ガルガンティア』でも人と人の絆だったり、船団同士の連携だったりの話があったと思うんですけど、我々も船団の仲間たちと同じように連携しながら、ここまで大航海を続けてきましたね。 平澤 オリジナル作品なら大きな方向転換があって当たり前なんですけど、村田監督や虚淵さんの力もあって初期コンセプトからほとんど根幹を変えずに進んだ珍しいタイプの企画でしたね。そういう意味では貴重な体験をさせて頂いたと思っています。
―― では最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
平澤 ここまでお付き合いして頂いて、本当にありがとうございます。放送が終了してから2年が経って、劇場に足を運んでくださるファンの方には感謝の言葉しかありません。ぜひ『ガルガンティア』の総決算として楽しんで欲しいですね。 小坂 スタッフも船団の一員みたいな気持ちで作ってきましたし、ファンの方もその一員となって観るという感覚を味わってくれていたような気がするんです。映画館という一つの船の中で、なんとなく連帯感を持ちながら観ることって、とても気持ちの良いものだと思うので、一区切りとなる最後の航海を楽しんで欲しいですね。 菊川 後編でひとまず完結となりますが、自分の今後の人生において、『ガルガンティア』は間違いなく大きな位置を占めていく作品なんだなと感じています。そういう気持ちをファンの方と共有できれば嬉しいですし、ぜひ劇場まで足を運んで頂いて、レドの最後の航海を見届けて頂きたいです。

PROFILE
平澤直(ひらさわなお) 元Production I.Gのプロデューサー。本作『翠星のガルガンティア』を始め、『輪廻のラグランジェ』『ブレイクブレイド』を担当。現在はウルトラスーパーピクチャーズ所属。 小坂崇氣(こさかたかき) ニトロプラスの代表取締役兼プロデューサー。イラストレーターやアニメ雑誌編集者を経て、2000年にニトロプラスを設立。プロデューサーとして同ブランド全作品の総指揮を執る。 菊川裕之(きくかわひろゆき) バンダイビジュアルのプロデューサーとして様々なアニメ作品に携わる。主な担当作品に『ブレイクブレイド』『輪廻のラグランジェ』『ガンダム Gのレコンギスタ』などがある。

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