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スペシャルインタビュー第2回 細谷佳正「『メガロボクス』は「自分の人生を見つけ、それを真剣に、本気で生きるとは何か」を問いかけてくる」

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稀代のクリエイター森山洋、待望の初監督TVアニメ『メガロボクス』。
第2話からジョーと名乗ることで話題となっている、主人公・ジャンクドッグ を演じる細谷佳正さんにインタビュー。
“『メガロボクス』は現代版『あしたのジョー』ではなく、それを見て育った一視聴者の憧れや感動、衝撃、心の震えといったものが、この『メガロボクス』に反映されている”と語る。細谷さんの目に映る作品の魅力を伺った。

ジョーのセリフを聞いて、自分もいつかこんな役をやれるようになりたいと思った

――ジャンクドッグ役のオファーを受けた時の気持ちを教えてください。

細谷もう、嬉しいという一言に尽きますね。このオーディションを受けたのは、2017年の(喉の治療のための)休業直前で、結果が出たのは休業期間中でした。自分の体調や喉の調子は順調に回復してきていましたし、徐々にリハビリをしていけば、収録には間に合うだろうという思いがありました。
休業中にニューヨークに行ったのですが、飛行機の中でたまたま『クリード チャンプを継ぐ男』を観ました。ボクシング作品に関わらせて頂くことになって、「カムバックってこういうことか」と嬉しかった。いい巡り合わせで役をいただけて、すごくありがたいことだと思いました。

――原案の『あしたのジョー』に対しては、どんな印象を持っていますか?

細谷ファンの方には不勉強だと怒られるかもしれないのですが、「立て、立つんだジョー!」「真っ白に燃え尽きたぜ」というセリフとクロスカウンターのシーンが印象的ですね。専門学生の時の卒業公演で『僕の東京日記』という作品をやったのですが、それが1960年から70年代の学生運動のさなかの、ある一人の男の話でした。その中に(よど号ハイジャック犯の)「われわれは明日のジョーである」というセリフがあって、それはどういうことなんだろうと思い、調べたことが作品知ったきっかけです。そしたら、打ちのめされても、打ちのめされても、「自分たちの思想を守るためには、何度でも立ち上がる」という意味があることが分かって。その時におおまかなストーリーを知って、『あしたのジョー』はそういう物語なんだなという印象を持ちました。

――アニメや漫画でご覧になったことはありますか?

細谷確かまだ養成所の研究生だった頃、TVで偶然放送していたのを見たように思います。『あしたのジョー』といえば、ボクシングシーンとか「立て、立つんだジョー!」というセリフが有名ですが、僕の記憶に残っているのは紀ちゃんとジョーが二人で話すシーン。
僕が研究生の頃のアニメーション作品の主人公は、大雑把な印象ですけど、元気だったり声が大きかったり熱かったり、そういうキャラクターが多かったように思います。でも、『あしたのジョー』では、主人公の在り方が全然違っていました。紀ちゃんと話す(ジョー役の)あおい輝彦さんのセリフのトーンがその時の僕には「別に聞いても聞かなくてもどっちでもいいけど、俺はこう思ってるんだよね」といったようなしゃべり方に聞こえて。「なんてかっこいいんだろう。僕もいつかこんな役をやれるようになりたい」と思ったのを覚えています。

嫌な奴に思われるよう、意識して演じた

――演じられたジャンクドッグの魅力はどんなところにあると思われますか?

細谷ジャンクドッグは、自分が置かれている状況や自分の人生、自分の持っている可能性や力みたいなものを試したいと思いながらも、試せる状況がない。その状況を無理やり変えたいとも思っていないし、変えようともしていません。そんな自分を「俺なんてこんなもんか。どうせ偽者なんだろ俺なんて」と、自分自身を皮肉っているところがあって、そこがジャンクドッグというキャラクターに、影を落としているように思います。自分があまり演じたことのないキャラクターですが、そういった部分は人間として理解できるし、魅力だと思います。

――脚本についてはどう思われますか?

細谷ものすごく良い脚本だと思います。たとえば「ありがとう」という言葉には感謝の意味がありますが、例えばですけど、怒りを伝えたくて言う場合もあるし、皮肉で言う時もある。日常的にも言葉の発し方でいろいろなパターンがありますよね。『メガロボクス』も同じで、どう演じるかを迷うことがあります。それだけ人間をしっかり描いていると思うし、その意味を決めつけてしまうことは、野暮だなと思わせてくれる脚本ですね。

――演じる上で、注意しているところはありますか?

森山「なんて嫌な奴だ」と相手に思ってもらいたいので、そこはできるだけ意図して演じるようにしています。本作のコンセプトに「偽物だった男が本物と出会い、それに成る」とありますが、本物に憧れるからこそ、相手を批判することもあると思います。切磋琢磨して競っている若い頃には、自分にも自信があるし、本当は相手を凄いと思っているのに、それを認めたくないから、批判するというか、つい意地悪を言ってしまうこともありますよね。そういったことを匂わせたい。だから、何か嫌なことを言われてそのまま怒るのではなく、そこは反応せずに皮肉で刺すような感じです。特に第1話序盤では、ちょっと嫌な奴で相手をイライラさせるような物言いを意識しました。

音響面でもすごくクオリティの高いものにしていきたいという思いが伝わってきた

――収録現場の雰囲気はどうでしたか?

細谷わりと静かでした。スタジオにはベテランの先輩方が多くいらっしゃっていて、集中される方が多いので、和気あいあいというよりも、それぞれの役に集中されていたり、セリフを何回も練習されていたり…。スタッフサイドも、すごく音にこだわって収録していて、テストが終わって本番までの間に綿密な打ち合わせがあるので、本番までの時間が長く感じました。僕はスタジオにいても休まらないし、テストの雰囲気を引きずるのもよくないので、すぐロビーに出ていました。だからテスト・本番・リテイク以外でスタジオに長くいることはなかったです。

――演じる側にもボクシングの試合のような緊張感はあったのですか?

細谷緊張感とはちょっと違うのですが、例えば同じカットに3人登場人物がいて罵倒しあっているシーンだったとしても、同時に収録できるのは1~2人。でも、3人が一緒に録っているようなクオリティを目指したい。そのためには、気持ちの鮮度を保ちたいので、一旦スタジオの外に出てたりして、状態をリセットしようと心掛けていました。収録を重ねてくると、別録りになるパートかどうかなんとなく分かるので、そこは意識して考えながらやっていましたね。三好(慶一郎)音響監督はハリウッド映画の吹き替えや劇場作品を多く手掛がけていらっしゃる方なのですが、そういった作品と同様のこだわりを『メガロボクス』にも発揮されていました。劇場作品は音へのこだわりから単独で台詞を撮ったりします。今回はその手法を使って、音響面でも高いクオリティを目指していきたいという狙いがあったので、そこは僕らも考えながら、より良い結果が出るようにやっていました。

――勇利役の安元洋貴さんとはなにかやりとりをされましたか?

細谷インタビューで(仲がいいから)「打ち合わせをされるのですか」と聞かれるのですが、特にしないです。テスト収録が始まって、そこで初めて役を演じあうのが楽しいので、事前には何も言いません。終わった後もお互いの芝居については特に話さないです。それぞれがキャラクターを脚本に沿って魅力的に見せることに演者は集中しているし、自分が演じたキャラクターがその話数の演出のカギにもなったりするので、毎話ベストなものを作る事だけ考えています。安元さんとは、次の話はどうなるのだろうと、週刊少年誌を楽しみにしている学生のように話したりしています。

第1話の試写を見て、あまりのクオリティの高さに嬉しくなった

――演じる上で監督と相談されますか?

細谷森山(洋)監督も三好音響監督も「細谷君が気に入らなかったり、リテイクしたいと思ったりした時は、どんどん言ってくれ」とは言われたのですが、監督からは「こうしてくれ」といった指示は特にありませんでした。その分僕は不安になってしまって、序盤で「本当にこれでいいんだろうか」と思うことは結構ありました。アフレコが第9話くらいまで進んだ頃に、第1話の関係者試写を収録前にキャスト向けに上映して頂いたのですが、あまりのクオリティの高さに嬉しくなっちゃいました。「これはいけるぞ!」って。森山監督が、「めっちゃいいっす」と軽く言ってくださってはいて、「ホントかな?」と心配でしたが、第1話を見て本当によかったなって。第9話まで収録した後でしたが、信じていこうと思えた瞬間でしたね。

―では、その第1話の感想を改めてお願いします。

細谷ジャンクドッグが雨の中で勇利と対峙するシーンはすごくよかったです。それまでジャンクドッグが抱えている、「何が本物のメガロボクスだ、調子に乗んじゃねえぞ」っていう思いとか、ひがみ、嫉妬みたいなものが混ざって、ヒリヒリとしたものをすごく感じさせるんですよ。勇利はいつも自分の力を100%発揮して「キング・オブ・キングス」であり続けられる。一方で、自分には力があるのに南部贋作の一言で、お金のため生活のために負けなければならない。俺は一体何なんだっていうイライラが爆発している。勇利とのスパーリングシーンでも、ジャンクドッグは勇利が強いとは分かっていない。恵まれたメガロボクサーに対して、ただイライラして腹が立っているだけ。「俺の何が分かる。ボコボコにしてやる」っていう思いがあふれるあのシーンは、『メガロボクス』のエンターテイメント性だけでなく、ジャンクドッグのメンタル面を反映させているシーンだと思います。そのシーンは自分がジャンクドッグをやらせていただいていることもありますが、いいシーンだと思いました。

――キャラクター以外にも物語の魅力を象徴しているシーンなどはありますか?

細谷第1話の冒頭のジャンクドックのモノローグですね。森山監督はこれが言いたいんだと思いました。『ここにとどまるか?ここから抗うか?』ジャンクドッグはIDもなく、本来ならメガロボクスで勇利と闘えるような身分ではなく、周りからすれば無謀ともいえる挑戦をしようと踏み出していく。踏み出した先に明るい未来が待っているかどうかも分からないのに、それでも向かい続けていく。その姿を通して「自分の人生を見つけ、それを真剣に、本気で生きるとは何か」というメッセージを問いかけたのではないかと。受け取り方はたくさんあって当然ですし、沢山あって欲しいなと思います。僕は、個人的には、そう思いました。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

細谷『あしたのジョー』を見ていた世代の方にお伝えしておきたいことは、この作品は『あしたのジョー』ではないということです。その世代の方は『あしたのジョー』からご自身の哲学や美学に影響を受けた方も多くいらっしゃると思います。そして世代を超えて、同じように影響を受けた一人の監督が作った物語が『メガロボクス』です。だから現代版『あしたのジョー』ではなく、それを見て育った一視聴者の憧れや感動、衝撃、心の震えといったものが、この『メガロボクス』に反映されていると思います。『あしたのジョー』を見たことがある方にも見ていただきたいですし、『あしたのジョー』を全然ご存知ない方にも見ていただきたいです。オリジナルの話ですし、第1話を見たら2話3話を見たくなるので、ぜひ第1話をご覧ください。個人的には、2018年を代表するクオリティの高い作品だと思っています。

PROFILE

細谷佳正(ほそやよしまさ)
1982年広島県出身。吹き替え作品に多数出演、その後『テニスの王子様』の白石蔵之介役で知名度を上げる。『この世界の片隅に』北條周作役、『進撃の巨人』のライナー役、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のオルガ役などに出演。近年は『ジャスティス・リーグ』のバリー・アレンの吹き替え等をしている。

<放送情報>

毎週木曜日深夜25:28〜TBS他にて放送中!

<Blu-ray BOX発売情報>
Blu-ray BOX 第1巻<全3巻>
2018年7月27日発売
Blu-ray BOX:¥13,000(税抜)

メガロボクス 公式サイト

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