見る物を圧倒する映像の凄み。
アニメの新しい可能性に出会えた。

2016年初夏から国内で発売がスタートしたULTRA HD Blu-ray。その映像の凄さはなんと言ってもリアリティーだ。肉眼で見る景色との差を感じない臨場感は、ダイナミックな光と豊かな色があってこそのもので、これぞ次世代の映像だと強く実感した。 僕はアニメだけでなく、特撮作品やSF/ファンタジー作品が大好きで、そんな現実に存在しない架空の世界が実際にロケ撮影をしたかのような本物感のある映像で再現されることに興奮した。 そして、いよいよ待望のアニメ作品もULTRA HD Blu-rayソフトが登場。「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」は、映画館でもBlu-rayでも堪能したが、宇宙を舞台にしたリアルで苦い戦争のドラマを、骨太な映像と攻めに攻めた音で描き切っており、ガンダム作品としてだけでなく、映画としても大のお気に入りだった。

場面写真

そんな本作のULTRA HD Blu-ray版を見たときの衝撃は凄まじかった。宇宙を切り裂く雷鳴がまさしく、落雷を見たときのようなインパクトだったと言っていい。地球連邦軍のモビルスーツを狙撃するジオンのビッグガンの大口径ビーム砲の迫力は圧倒的だ。なんと鮮やかな閃光。豊かな色とあいまって、力強い輝きが映像の力を何倍にも高めている。冒頭の戦闘だけで、今まで以上にそこで描かれる戦争というドラマに入り込んでしまった。 今まで以上に鮮明に見えるから、戦いの迫力も増すし、苦みたっぷりのドラマも自分がその立場だったらどうするかを考えてしまうほどに強く伝わってくる。光と陰の演出が際立つことで、これほどまでに映像の力強さが増すものだろうか? そういう意味では実写映画のULTRA HD Blu-rayで感じるリアルさ以上に、本作の方がリアリティーが増しているとさえ感じてしまった。実は僕にとっての本作は、初見ではフリージャズを大胆に採用した音楽やそれと絶妙にバランスした数々の音が大きな魅力と感じていた。映像もそれにふさわしい質の高い出来ではあったが、目の前に迫ってくるような勢いやテンションの高さでは映像がやや負けているとさえ思っていた。それが、ULTRA HD Blu-rayとなり、音のパワーに負けない凄みを映像が手に入れたと感じた。この映像の凄みはぜひとも自分の眼で確かめてほしい。

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アニメとULTRA HD Blu-rayの相性は抜群に良い。これが僕の結論。アニメは古くから透過光のような演出手法を用いており、現実の光だけでなく、アニメならではと言える光の演出を行ってきた。そんなアニメの表現がさらに一段階上のレベルに到達したと言いたくなるし、光と陰の演出が際立つことで、改めて作り手の意図がよりダイレクトに伝わってきたと感じる。これまでずっとアニメを見てきた僕にとってはそれが一番うれしい。 ULTRA HD Blu-ray版の「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」は、ガンダム好きならばもちろんだが、アニメ好きな人にとっても、アニメの新しい可能性を発見できる作品と断言できる。

鳥居一豊
オーディオ・ビジュアル専門誌での編集スタッフを経て、フリーライターとして独立。月刊「HiVi」誌のほか、さまざまな媒体でオーディオ、ビジュアル関連の記事を執筆中。アニメとの付き合いは小学生以来。趣味として膨大なテレビアニメや劇場用アニメ、OVAを見続けている。自宅には約15畳強のサイズの専用シアタールームがあり、4K映像とドルビーアトモス対応の4.2.2ch音響システムで映画やアニメを堪能する日々を過ごしている。

※画像は実際の4K ULTRA HD Blu-rayとは異なります

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