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『しんちゃん通信』 スペシャル対談インタビュー 髙橋 渉(監督)×うえのきみこ(脚本)

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ギャグとアクションが爆盛のしんちゃん映画最新作『爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~』Blu-ray&DVD11月9日発売!カンフー映画への愛情や、関根 勤さん、ANZEN漫才さん、ももいろクローバーZさんという豪華ゲストのエピソードなど、髙橋 渉監督と脚本のうえのきみこさんにお話をたっぷりうかがいました。
(取材・文 / 大山くまお)

やっぱりジャッキー・チェンですね

──今回、カンフーを題材に選んだのはなぜでしょうか?

髙橋 カンフーは前から好きで、しんちゃんのコミカルなキャラクターとカンフーは相性がいいだろうと思っていました。何年も前からやってみたくて、何度も提案していたんですよ(笑)。

──マサオくんがしんのすけたちにカンフーについて説明するところで、ブルース・リー、ジャッキー・チェン、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウ、ジェット・リー、ドニー・イェンの姿が登場しました(笑)。こちらは髙橋監督の指定なのでしょうか?

髙橋 そうですね。カンフー映画はずっと見ているので、レジェンドたちに登場していただきました。

──ユン・ピョウが『チャンピオン鷹』の格好をしているのにグッと来ました。

髙橋 そうなんですよ。僕にとってのユン・ピョウは『チャンピオン鷹』なんです。

──特に思い入れがあるのは?

髙橋 やっぱりジャッキー・チェンですね。子どもの頃はテレビでよく『蛇拳』や『酔拳』などの映画を観ていました。子どもながら血がたぎると言いますか、一緒に戦っているような気分で観ていましたね。そんな思いが今回の映画に結実しています(笑)。

──うえのさんは、カンフー映画はご覧になっていましたか?

うえの はい。私が小学生の頃は、小学5、6年生向けの雑誌に、普通にジャッキー・チェンのピンナップがついていましたから(笑)。アイドルでしたよ!

──ちなみにお二人が一番好きなカンフー映画は何でしょう?

うえの 私は『プロジェクトA』です! ジャッキー・チェン演じるドラゴン刑事が「手柄はくれてやる! 責任は俺が取る!」と言うシーンが好きで。いつも心にドラゴンがいます(笑)。

髙橋 これは一番難しい質問ですね……(笑)。現在作られているカンフー映画が好きです。進化していますし、表現も新しくなっていますしね。

最初は尻だけで戦う「尻拳」でした

──しんちゃんたちが使う「ぷにぷに拳」はどのようにできたものなのでしょう?

髙橋 しんちゃんでカンフーをやるのは決まったのですが、どうやって戦うんだ? ということになって、最初はお尻だけで戦う「尻拳」みたいなプロットだったんですけど、ちょっとそれじゃねぇ、と(笑)。柔らかいところで戦うというアイデアが出てきて、たしかに子どもは柔らかいですし、しんちゃんも柔らかそうなので、それで敵をやっつけるのは面白いな、と。でも、「ぷにぷに拳」に落ち着くまではいろいろありましたね。耳たぶだけで戦う、とか。しばらくそれで進みましたが、冷静に考えて耳たぶで戦えるわけないだろ! って(笑)。

──髙橋監督の小さなお子さんのぷにぷに具合も反映されていたとお聞きしました。

髙橋 それはありますね。すっごい柔らかいので、これはさわってると平和になるな、と思いますから(笑)。自分の中で説得力ができたので、自信を持って臨めました。

──育児体験といえば、後半でひまわりが凶暴化するときの描写がリアルだと思いました。

髙橋 容赦なく蹴ってきますからね(笑)。可愛いだけじゃない、赤ちゃんの凶暴性が表せればと。

──細かいところですが、これまでのしんちゃん映画と違って、ひまわりを抱っこしているのがみさえじゃなくてひろしになっていましたね。

髙橋 はい、父と母がいたら、抱っこ担当は父親になりますよね。重いものは男が持つことになりがちなので(笑)。みさえがひまわりを抱っこして中国に行くのは、ちょっと大変かな、と。

──オープニングでひろしがお皿を洗っていたのも新鮮でした。

髙橋 自分が飲んだコーヒーのマグカップを洗ってましたね。自分の子育て経験はちょっと活かしています。最初に野原家の外観が出てきますが、家の前を保育園に行くサラリーマン風の父親と子どもが歩いているんです。保育園の送りは父親が担当することが多いですからね。

──たしかに、そうですよね。では、髙橋監督の実体験が反映されて、ひろしの行動が少し変化しているんですね。

髙橋 そうですね。たしかに反映されていますね。

うえの 素晴らしい。

すべて「ジャッキーはすごい」に戻ってくる

──ブラックパンダラーメンのボス、ドン・パンパンのキャラクターと彼が作るブラックパンダラーメンを食べた人たちが凶暴化するシーンは、最近の世相を反映しているのではないかと思いました。

髙橋 そうですね。ドン・パンパンは実利主義、利己主義であって、快楽主義ではないんですよね。昔はそういう人をたしなめるような風潮がありましたが、今は儲かっているならいい、株主に還元しているからいい、となっていると思います。お金を稼いでいる人が悪い人とは思いませんが、ドン・パンパンは振り切っているキャラクターになっています。本当にお金だけが目的で。ある意味純粋な男です。

うえの 最初はもっといろいろな目的を考えたのですが、(他の目的を)つければつけるほど嘘っぽくなって。

髙橋 ユーモラスなところを残して、本当にイヤなヤツには見えないようにしていました。パンダを飼っていたり、笹を食っていたり(笑)。これはうえのさんのアイデアです。

──ヒロインのカンフー娘・ランとドン・パンパンのアクションシーンがかなりリアルで激しいものでした。近年のしんちゃん映画では珍しいと思いますが、これは髙橋監督のこだわりでしたか?

髙橋 肉弾戦は昔のしんちゃん映画の見どころの一つでしたが、たしかに最近はなかったんですよね。自分もやってみたかったのですが、格闘というのは本当に難しいですね。骨も折れないし、血も出せないので、そのあたりもけっこう難しかったです。

──では、アクションシーンの絵コンテは髙橋監督が描いたのですか?

髙橋 全部ではありません、絵コンテ担当の方々に分担して描いていただきました。でも、中国拳法らしさを出すのが難しくって、これは一朝一夕にはできないな、と。技をぶつけあうのは、その技に精通していないとできないんですよ。あらためてジャッキー・チェンの凄さを思い知りました(笑)。

うえの すべて「ジャッキーはすごい」に戻ってくるんです(笑)。

──ヒロインのランが容赦なくやられるシーンがありますが、それも久しぶりな感じでした。

髙橋 そうですね。あまり活かせなかったのですが、今回は「土ぼこり」がコンセプトだったんですよ。やっぱり土に汚れるのがカンフーだと。

──たしかにジャッキーも戦っていくうちにどんどん土で汚れていきますからね。

髙橋 そういうところを再現したかったのですが、ぜんぜんできませんでした。

うえの 最後、砂が舞っているところぐらいでしたね(笑)。

──うえのさんがお気に入りのキャラクターやシーンがあったら教えてください。

うえの マサオくんが「プロジェクトA」のテーマソングを歌うところですね。たしかにト書きに「でたらめに歌う」と書いたけど、本当に歌うとは思わなかった(笑)。めちゃめちゃ面白かったですね。

髙橋 脚本は何度も直しが入るんですが、そのたびにうえのさんは新しいギャグをあちこちに入れてくるんですよ(笑)。

うえの 会議で「ダメ」と言われることもけっこうあるんですが、その翌々週ぐらいに「ノーコンプライアンスラーメン」というフレーズを入れましたね(笑)。

──「ノーコンプライアンスラーメン」は素晴らしかったですね! 髙橋監督とうえのさんの心の叫びかと思いました。

髙橋 そうですね(笑)。

うえの 本当にそうですね(笑)。

――あと、ブラックパンダラーメンを食べて凶暴化した男がしんちゃんに「ガキは家に帰って半ライスでも食ってろ!」と言うのがひどくて本当に面白かったです(笑)。

うえの あはははは。ひどい大人ですね!

髙橋 家で半ライスって……(笑)。

「パン、ツー、まるみえ」も全部ニュアンスが違う!

──師匠役で関根勤さんが出演されていました。関根さんは大の『クレヨンしんちゃん』ファンとして知られており、『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』以来の出演となります。どのような経緯での出演だったのでしょう?

髙橋 師匠の声を誰にしようか、という話になって、こちらからは「不思議な人がいい」という困ったオーダーを出していたんです(笑)。なかなかそういう方がいなかったのですが、テレビに関根さんが出演しているのを偶然見て、「あ、関根さんがいい!」と。

──ちなみに何の番組でしたか?

髙橋 『ピタゴラスイッチ』ですね。「こんなことができます!」って。

──ああ、子育て中は見ますよね(笑)。

うえの アフレコは映像に合わせてやったんですか?

髙橋 はい、やりましたよ。

うえの じゃ、あの「パン、ツー、まるみえ」も全部やったんですか?

髙橋 全部やっていただきました(笑)。

──使いまわしじゃなかったんですね!

髙橋 そうはいかないですよ! 「パン、ツー、まるみえ」にもシーンによって微妙なニュアンスの違いを出していただいてますから(笑)。ノリよく演じていただいたので、違うな、と思うこともほとんどありませんでした。

──カンフー映画にも詳しい方なので、カンフー映画の師匠役もつかんでいらっしゃいますよね。

髙橋 はい、収録の合間にカンフー映画の話もしましたね。

──ANZEN漫才、ももいろクローバーZとゲストもカラフルでしたね。みやぞんさんはセリフも多かったですが、アフレコはいかがでしたか?

髙橋 マイクの前に立っていただいたとき、リラックスしていただきたくて「何回でも録り直せますから、自分で違うなと思ったら気兼ねなく言ってください」とお伝えしたのですが、「真剣にやりたいです!」とおっしゃってましたね。どんなことでも非常に真面目に取り組む方だな、と。

──みやぞんさんが歌を歌いますが、歌詞はうえのさんが書いたんですか?

髙橋 あれはみやぞんさんの即興です。敵を足止めする歌を書いてください、とオファーしました。

──「敵を足止めする歌」って何だ? って感じですけどね(笑)。

髙橋 それぐらい無茶振りのほうが面白いだろうと思って。体の動きも演じていただいて、ビデオで撮ったので、あのシーンはみやぞんさんの動きそのままです。

うえの 劇場で観ていたら、子どもたちが「みやぞんだ! みやぞんだ!」と興奮していて、やっぱり人気がすごかったですね。

──ももクロさんはエンディングテーマのほか、ブラックパンダラーメンのCMに出演していました。

髙橋 エンディングテーマは決まっていたとはいえ、なかなか出番がなかったのですが、出ていただいてよかったですね。おかげで変なCMになりました。

──変なCMといえば、うえのさんの出番ですよね。

うえの ブラックラーメンを食べると過払い金が返ってくる、というCMですね(笑)。

髙橋 僕からは絶対に出てこないアイデアです。

しんのすけはジョーカー

──では、最後に髙橋監督とうえのさんが今回の作品に込めた「しんちゃん」らしさは、どのようなところでしょう?

うえの 「しんちゃん」映画をやるとき、過去の作品にはない新しいことをやるのがクレヨンしんちゃんらしさじゃないでしょうか。

髙橋 実はしんのすけを中心にストーリーを考えることはないんですよ。しんのすけはマイペースなくせに、家族とも友達ともゲストや敵とも、全部とかかわり合いを持っているんですよね。だから、ストーリーの流れを作ってから、しんのすけがどう動くかを考えています。作り手にも、しんのすけがどう動くかはわからない。しんのすけはジョーカーのような存在なんです。キングなら役割はあるけど、ジョーカーは何にでもなるし、何とも組み合わせられる。それがしんのすけなんです。

──だからこそ、ストーリーがどうなるか読めませんし、最後に想像もつかない展開が待っていたりするんですね。ありがとうございました!

PROFILE

髙橋 渉(たかはし・わたる)
1975年生まれ。シンエイ動画所属。多くの劇場版『クレヨンしんちゃん』に携わった後、『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14年)で長編映画初監督を務める。『爆睡!ユメミーワールド大突撃』(16年)でも監督。『クレヨンしんちゃん外伝 お・お・お・のしんのすけ』(17年)ではシリーズ構成と脚本を務めた。

PROFILE

うえのきみこ
1975年生まれ。『クレヨンしんちゃん』テレビシリーズには2010年から参加。『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』(13年)の脚本(共同執筆)を経て、『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』(15年)では単独で脚本を務めた。『クレヨンしんちゃん外伝』シリーズは『エイリアンvs.しんのすけ』『おもちゃウォーズ』『家族連れ狼』の3作で脚本を担当している。

<Blu-ray&DVD情報>

映画 クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~
2018年11月9日発売
Blu-ray:¥4,800(税抜)/ DVD:¥3,800(税抜)

映画 クレヨンしんちゃん 公式サイト

バンダイナムコアーツ 『クレヨンしんちゃん』Blu-ray&DVDサイト

映画 クレヨンしんちゃん 特設サイト 「しんちゃん通信」

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