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大人気アニメが完全新作の短編アニメーションで復活!『機動警察パトレイバーREBOOT』吉浦康裕監督インタビュー全文掲載

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あの大人気アニメ『機動警察パトレイバー』が、ファン待望の完全新作アニメーション(短編)で復活! キャラクター原案・ゆうきまさみ、脚本・伊藤和典、メカニカルデザイン&監修・出渕裕ら“HEADGEAR”のメインメンバーも制作に参加した話題作が10月15日(土)より『劇場上映 ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市』(東京・新宿バルト9、大阪・梅田ブルク7)にて1週間限定上映され、早くもBlu-ray&DVDで発売決定! そこで今回は、新作アニメ『機動警察パトレイバーREBOOT』の監督を務めた吉浦康裕さんに、本作の見どころなどについて話を伺った。

全力ストレートな『パトレイバー』をもう一度作りたい

──吉浦監督が本作に携わることになった経緯を教えてください。

吉浦 元々のきっかけは、「日本アニメ(ーター)見本市」という企画で『PP33 -POWER PLANT No.33-』と『ヒストリー機関』の2本を監督させて頂いて、スタジオカラーの編集室で作業をしていた時に、緒方(智幸)プロデューサーから「今、見本市で『パトレイバー』をやるという話があるんだけど…」と声を掛けて頂いたのが最初ですね。その際に、全力で両手を挙げて「実は『パトレイバー』の大ファンなんです。ぜひやらせてください」と自分から前のめりに言ったんです(笑)。それまでオリジナル作品をずっと作ってきたのですが、その方向性のままでいることに行き詰まりを感じていた時期でもあったので、それを打破するようなものを作らなければっていう漠然とした焦りというか閉塞感があったんです。不思議なもので、『パトレイバー』の短編がやれるかもしれないという、その状況を聞いた時に反射的に「今自分がやるべきはこれじゃないかな」と確信したんです。それで、「とにかくやらせてください」とアピールして、その時は「とりあえず保留というか、どうなるか分からないから」という話だったんです。

後日、緒方プロデューサーから「本当にできるかもしれない」という話を頂いて、何を自由にできるかも決まっていないにも関わらず、頭の中には『僕の考えたパトレイバー』が既にあって(笑)。それで後日、改めてHEADGEARのメンバーである出渕裕さん、伊藤和典さん、ゆうきまさみ先生のお三方にお会いできるようセッティングして頂いて、緒方プロデューサーと庵野(秀明)監督も同席のうえ、挨拶をさせて頂きました。その際に、変化球ではなく、全力ストレートな『パトレイバー』をもう一度作りたいという話もさせて頂きました。自分の中で、今の10〜20代の若い子は『パトレイバー』を知らないという人が多い印象があったので、そういう人たちに向けて、前知識が全くなくても楽しめる作品を作りたかったんです。かつ、これを観れば『パトレイバー』の面白さが伝わるような、今の時代にもマッチした『パトレイバー』の導入編みたいなものを作りたいってことを熱心に伝えたんです。そうしたら、幸運なことに「それなら吉浦監督が観たいものを作るのが良いんじゃない?」と仰ってくださって。自分が作りたいものに対して迷いはなかったので、その直後にすぐプロットを書き上げてお見せして、「基本はこれで良いんじゃないか」ということになってからは、割とトントン拍子で話が進んでいった感じですね。

──大人気コンテンツである『パトレイバー』の新作を監督するにあたり、プレッシャーはありましたか?

吉浦 この企画は自分の中では勢いで転がり出した部分があるので、プレッシャーというよりも『パトレイバー』を自由に作れることの方が嬉しくて仕方なかったですね。自分はオリジナル作品を作っていた頃から、『パトレイバー』のメイキング本とかを参考にしていたこともあって、実は自分の創作のお手本みたいな作品だったんです。なので信じられないかもしれませんが、「パトレイバーらしい内容にしなきゃ」といったプレッシャーは全くありませんでした。まあ、さすがに作り始めて一段落して、最近あえて観ないようにしていた劇場版を見返した時に「ヤバい」って少し焦りましたけど(笑)。やっぱり『パトレイバー』はすごいなって思いましたし、「俺、あの『パトレイバー』の新作を制作しているんだ」って、今になってプレッシャーを感じて、ヒヤッとしています(笑)。

観終わった後に「これが『パトレイバー』の面白さなんだ」って感じてもらえるように…

──本作を制作する上で意識されたことは何かありますか?

吉浦 まず、一つはファンとして観たいものを作るということと、もう一つは『パトレイバー』を知らない人が初見で観て、ちゃんと『パトレイバー』として面白いと思ってもらえるものを作る、ということに注力しました。時間にして7分くらいの短編アニメーションではありますが、『パトレイバー』らしい世界観を提示して、『パトレイバー』らしいキャラ立ちをして、説明セリフなしにレイバーがどういうものか分かる。しかも、戦い方や決着の仕方も普通のロボットアニメとこういうところが違う、というのが一通り分かるように作ったつもりです。なので、観終わった後に「これが『パトレイバー』の面白さなんだ」って感じてもらえるように作ろうっていうのは特に意識したところですね。

──吉浦監督は監督の他にも、絵コンテ・演出・撮影監督・編集、そして脚本も務めていらっしゃいますが、苦労されたのはどの部分ですか?

吉浦 アクセル全開で疾走しているような作品にしたかったので、絵が全編、密・密・密なんです(笑)。ですから、これは僕というよりはむしろ絵を描くことになったアニメーター、背景美術チーム、あるいはこれだけ動かしたCGチームが大変だったと思います。特に自分の作り方として、最初のレイアウトや画面構成の基礎は自分自身で作るので、それを土台にして、スタッフのみなさんに「こういう絵にしてください」とお願いするんです。だから、ある意味、絵描きの方が逃げられない作り方なんです(笑)。例えば、こういうアングルで、望遠で商店街がギュウギュウに見えて、ここに人が10人くらいいるっていうのを、こちらから提示してしまうので、あとはもう描くしかないという。ただ、スタッフもみんな『パトレイバー』だからということで、かなり好意的に作業してもらっている部分を感じたので、そこは『パトレイバー』という作品に助けてもらったなと感じています。

ゆうきまさみさん、伊藤和典さん、出渕裕さんらの様々なアドバイスに助けられた

──本作のストーリーと登場キャラクターについて教えてください。

吉浦 テロ犯によって暴走したレイバーを取り押さえるまでの一連の事件が物語として描かれています。なので、一見すると勢いで見せきれるような内容ではあるんですけど、どんな短編でも起承転結というのは絶対に必要だと僕は思っていて、きちんと導入から入って、さり気なくキャラクター紹介と世界観紹介をするように気をつけました。アクションシーンも実は前半と後半で分けているのですが、それは前半と後半で見せ方のコンセプトを変えているからなんです。短編なら短編なりに、ちゃんと緩急を付けるような話にするということは気を遣った点ですね。基本は全部アクションシーンですけど、『パトレイバー』という作品はキャラ立ちしてなんぼだと思っていて、そうなるとキャラクターたちが喋っているシーンが重要になってくると思うんです。でも、会話シーンに時間を割く余裕は無いので、もう喋らせながら戦おうと(笑)。

それに加え、今作のキャラクターは、『パトレイバー』初心者はもちろん、かつてのファンにしてみても全く知らないオリジナルキャラな訳ですけど、そのバックボーンを説明することなく、いきなり事件から始めました。あたかも「このキャラクターはこういう性格って知ってますよね」って視聴者に十分浸透しているという体で、まるでシリーズのワンエピソードのごとく描く方法にしたんです。これは、劇場版1作目の「タイラント2000」というレイバーを捕まえるシーンに倣ったんですけど、例えば、太田(功)がすごい猪突猛進のトリガーハッピーで、(泉)野明がちょっとレイバーに思い入れのある女の子っていう前知識がなくあのシーンだけを観たとしても、ちゃんとキャラの性格が伝わるじゃないですか。後藤隊長っていう奴は曲者で、紳士は胃弱だなあ、とか(笑)。あれを観た時に、ああいう描き方をしても大丈夫なんだって思ったんです。そういう意味で、そのキャラクターが如何にそのキャラクターらしく見えて、尚かつ、それが説明セリフにならないように詰め込んでいくかに気を遣いました。この点については、キャラクターのセリフ回しを伊藤和典さんにかなりリライトして頂いたので、そこが凄く大きいと思います。

──脚本の伊藤和典さんの話がありましたが、出渕裕さんがメカニカルデザイン・監修として本作に参加されていますが、どういった部分を担当されているのですか?

吉浦 基本的には、過去のシリーズに登場していたイングラムと作業用レイバーのブルドッグを、本作にも登場させたいと僕の方からお願いしたんです。僕としては今までと同じデザインのままでいくつもりだったんですけど、出渕さんが「一度リファインします」と仰ったんです。最初どういうことか絵を見るまで分からなくて、それで新たに起こして頂いたイングラムのデザイン画を拝見したら、それが素晴らしくて。大まかなディティールは過去作のままなんですけど、シルエットとバランスがとてもシャープになっていたんです。僕は、どちらかというとイングラムは『パトレイバー』の世界感にはアンバランスなくらい、ヒーローロボットっぽく感じていて、そのギャップが好きだったんです。でも今回は、ああいうヒーローロボットのデザインを実際に重工業のメーカーが制作したらこうなる……というデザインになっていて。これがリファインなのかと思って、デザインを頂いた時にすごく納得しましたし、純粋に一人のファンとして興奮しました。他にも監修として様々な部分でアドバイスを頂いて、特に困った時には「こうしたら?」という一言に助けられましたね。

──ゆうきまさみ先生もキャラクター原案として参加されています。

吉浦 オリジナルキャラクターを登場させるにしても、それを『パトレイバー』という作品のキャラクターとして着地させるためには、やっぱりオリジナルスタッフの一人であるゆうきまさみ先生にデザインをお願いしたいという想いはありました。もちろん、週刊連載を抱えられていて、お忙しいのは存じ上げていたのですが、キャラクター原案だけでもお願いできないかと。自分の考えた『パトレイバー』に登場するキャラクターの絵を描いてくださいという、何ともおこがましいお願いをさせて頂きました(笑)。しかも、単純にこちらのオーダーを絵にするだけでなくて、独自のポリシーと価値観で、さらにキャラクターをアレンジしてくださったのが本当に嬉しかったです。メインキャラクターの3人だけでなく、テロ犯が登場するんですけど、そのキャラクターが僕の中で固まっていなくて、ニット帽の写真だけを持っていって、こういう帽子を被っているチャラい人でとオーダーさせて頂いたんですけど、自分のイメージ以上にドンピシャの設定が上がってきたので、本当に嬉しかったです。

キャラクターの魅力、メカニックの魅力、ロケーションの魅力、
自分が感じていた『パトレイバー』の魅力は余すことなく全て詰め込んだ

──アニメーション制作を『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズのスタジオカラーが担当されていますが、本作の制作を経てどのように感じられましたか?

吉浦 カラーさんには主にCG部分、レイバーのアクションシーンなどをお願いしたんですけど、本当に素晴らしい出来栄えでした。また本作に限らず、自分も今までCGを使って画面設計をする手法でやってきたんですが、その部分は親和性が高くて、こちらで組んだレイアウトのデータをそのまま相手に渡すことが可能だったので、非常にやりやすかったですね。逆に向こうから送られてきたデータのチェックもスムーズにできるので、すごく良かったです。あと、本作を制作するにあたって、過去の模倣だけでなく、今だからこそできることをやろうって考えた時に、より生活圏の中で闘ってみたらどうだろうかと。住宅街や商店街で闘った時の感じを出すために、CGでしか表現できないアングルや、アクションを入れたいという話をずっとしていましたね。なので、基本どのシーンも人間の視点から見上げるようなアングルにして、家屋や電線に挟まれたようなロケーションが多いです。また軽快ではなく、少し重そうに動く重機同士のぶつかり合いにしたい、と。それを言葉で説明したんですけど、比較的スムーズにイメージ通りのものが上がってきた時は「さすが!」と心の中で拍手喝采でした。

──本作の見どころや、特にこだわられたポイントなどを教えてください。

吉浦 やっぱり『パトレイバー』らしさ、ですかね。これは本家の方が考える『パトレイバー』らしさとはちょっと違うのかもしれませんが、少なくともファンとして観ていた時に自分が感じていた『パトレイバー』の魅力は余すことなく全て詰め込もうと。それはキャラクターの魅力であり、メカニックの魅力であり、そしてロケーションの魅力です。この3要素は自分なりに全て詰め込んだつもりです。例えば、キャラクターに関してはオリジナルですけど、『パトレイバー』の遺伝子は継承したつもりですし、メカニックに関しても今の時代だからこそできる新しい画の見せ方、臨場感というものにはすごくこだわっています。そして現実の東京というロケーションを背景美術で魅力的に描くことも。これは過去作に敬意を払う意味でも逃げられないポイントでした。何よりも目指したのは『パトレイバー』という娯楽作品を作ること。本当に観ていてワクワクするような作品を目指してスタッフみんな頑張ったので、より幅広い層の方に作品を観て頂きたいです。

──本作に期待しているファンへメッセージをお願いします。

吉浦 とにかく僕自身が『パトレイバー』の大ファン(笑)、『パトレイバー』という作品をもっと多くの方に知って欲しいという気持ちがあります。少し大袈裟な言い方をすると、パトレイバー人口を拡大させるくらいの意気込みで作った作品なので、作品タイトルは聞いたことがあるけど、まだ観たことがないという人にも観て欲しいですね。もちろん、自分も含めた昔からの『パトレイバー』ファンに向けても全力で制作しています。とにかく両方の方々に、一人でも多くの方に作品を観て頂ければと思っています。

の付いたインタビューはV-STORAGE online限定の記事です。

PROFILE

吉浦康裕(よしうらやすひろ)
北海道出身。スタジオ六花代表。主な監督作品に『イヴの時間』『サカサマのパテマ』『アルモニ』などがある。東京アニメフェア2010にて、第9回東京アニメアワードOVA部門優秀賞を受賞。


<上映情報>
2016年10月15日(土)より1週間限定上映!
「劇場上映 ゴーゴー日本アニメ(ーター)見本市 EXTRA」
東京:新宿バルト9/大阪:梅田ブルク7

<Blu-ray&DVD発売情報>
機動警察パトレイバーREBOOT 劇場先行版Blu-ray Disc【BVC限定商品/初回限定生産】
2016年10月21日発売
劇場先行版Blu-ray:¥7,000(税込)
※上映劇場にて2016年10月15日より最速先行販売開始

機動警察パトレイバーREBOOT
2016年10月26日発売
Blu-ray特装限定版:¥5,000(税抜)
DVD:¥3,000(税抜)

機動警察パトレイバーREBOOT 劇場先行版Blu-ray Disc【BVC限定】特設サイト

機動警察パトレイバーREBOOT 公式サイト

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